本日の1枚 Scat at the Break of Dawn

kobbanova2005-09-08

 ダバダバ・スキャットなブラジリアン・グルーヴ。て言ってもブラジルの人ではないのですが。
 
 Jon Lucien / Rashida (CD)
 フリー・ソウルて言葉が使われだした頃に、その代表例のように引き合いに出されていたのが、このジョン・ルシアン。
 カリブ海に浮かぶ小さな島の出身というこの人、ジャズ・ファンクなリズム感に爽やかなブラジリアン・フレイヴァーを加えた、暑苦しくないサマー・ブリージンな楽曲を歌っています。
 '73年にリリースされたこのアルバムは、全編に渡り、瑞々しいアコースティックな感性で貫かれています。
 ジョン・ルシアンの歌声は、ハッキリ言って粗野で野太いのですが、それが全く暑苦しくなく、むしろ清涼感を伴って聴こえるから不思議です。ブラジリアン・フレイヴァー覆われてキラキラと輝くサウンドの妙によるものなのでしょう。
 
 波の音とカモメの鳴き声で始まる、アコギとスキャットだけで構成された1曲目の『Kuenda』から、静かながら眩い美しさにあふれています。「夜明けのスキャット」て語を聞くと、由紀さおりではなく、この曲が浮かんでくるようになりました。
 そして2曲目がフリー・ソウルとしての名曲『Would You Believe In Me』。デイブ・グルーシンがアレンジを手掛けたこの曲、クールなジャズ・ファンク調のサウンドと、すっと耳に馴染むメロディを優しく語りかけるように歌うスキャット混じりのヴォーカルが、なんとも心地良くて美しくてカッコ良いんです。初めてこの曲を聴いたときは、本当に鳥肌が立ちましたよ。
 続く『Lady Love』も、出だしのエレピとスキャットから素敵です。浮遊感いっぱいの柔らかなトラックに、ハープの音色がキラキラと光ります。
 『Shana』と『Esperanza』は、アコギの音色が心地良いボサ・タッチの曲。
 『Satan』は、リズムは押さえ気味ながらもグルーヴ感はたっぷりのブラジリアン・メロウ・ソウル。ダバダバなスキャットが炸裂しています。
 そしてラスト曲『Zenzile』では、お約束どおり、波の音とカモメの鳴き声で終焉します。
 
 この季節に相応しく、夏の終りの1日を夜明けから夕暮れまで、海を眺めながら過ごした気持ちになれるアルバムです。
 
 僕が持ってるCDは、「フリーソウル・コレクション」と題されたシリーズの1つとして、'95年に再発されたものですが、このアルバムに加え『I'm Now』と『Mind's Eye』の計3枚の初期作品を収録したCDが発売されているようです。

I Am Now / Mind's Eye / Rashida

I Am Now / Mind's Eye / Rashida

 『I'm Now』を持ってませんが、でも、それだけのためにコレ買うのもちょっとなぁ・・・。