本日の1本 マニアック2000

マニアック2000 [DVD]

マニアック2000 [DVD]

 通りかかった旅行者(北部ヤンキー)を「百周年記念イベント」の主賓として歓迎するアメリカ南部のとある村。しかしそのイベントとは、南北戦争の復讐のため北部の人間を惨殺するものだった、、、て、ストーリーです。
 
 先日に続き、ハーシェル・ゴードン・ルイスが手掛けた作品です。公開は1964年。実はこの作品を観るのは初めてだったのですが、ルイス最高傑作ではないかと惚れこんでしまいました。(ちなみに、今まで一番好きだったのは『シー・デビルズ・オン・ホイールズ』)
 スプラッタなシーンもなかなか考えられているのですが、この作品の本当の凄みは、人間の狂気の描き方でしょう。もともとの邦題は『2000人の狂人』でして、要するに全員が狂人の村での出来事なんですね。狂人だからゆえに、殺人を犯す理由や殺人に対する特別な意識が全然ないんです。例えば快楽殺人であれば、人を殺すことに喜びを覚えるという「理由」がありますよね。一応は南北戦争の復讐て大義名分はありますが、実際はそんなものはどうでもいい感じ。
 ご機嫌なカントリー音楽を奏でながら、何の屈託も無く残虐な殺人を犯して盛り上がる村人たち。最初から最後まで村人たちは「笑み」を浮かべていて、普通に楽しそうなんですよ。それがなんともゾッとします。
 
 つい最近、ドキュメンタリー映画『パラダイス・ロスト』の内容がゴールデンタイムにテレビで(番組名忘れた)取り上げられてました。南部の田舎町で起こった殺人事件の果て、村八分にあっていた少年が犯人としてでっちあげられた事件です。この少年は現在も死刑囚として服役中だとか。その事件を思えば、『マニアック2000』で描かれた狂気は、アメリカにおいて決して絵空事ではないことが分かります。それが怖いですね。
 
 ゲーム風に殺害していくシーンもバラエティに富んでいて、イカレ具合がとても素敵です。バーベキューの肉にしたり、馬に引かせて四肢をバラバラにちぎったり、釘の飛び出たタルに入れて坂を転がしたり、的当てゲームの標的にしたり。子供から老人まで、人を殺すことを普通に楽しんでる様子の薄気味悪さといったら!
 その楽しげな雰囲気を後押しするご機嫌なカントリー、オールドタイミーな音楽もなんかいい感じです。ホラー映画ぽい音楽を使わない、その演出がまた素晴らしいですね。ちなみに音楽もルイスが担当したそうで、その感性の素敵さにしびれます。