本日の1冊

 昨年末からバタバタしているので、月日が過ぎる感覚があんまりないのですが、もう3月なんですね。このブログ、サイトの更新もすっかり滞っております。当分は週末ちょこっと更新するくらいしかできないかなぁ。
 年度末の3月は出張が多い時期で、そのために時間が削られていくことはツライんだけど、移動中に本を読む時間ができることはちょっと嬉しい。
 芥川賞を取った作品でも読んでみようかと本屋に寄ったところ、店頭に並んでいた別作品のほうが気になって購入しました。
 
 ニート

ニート

ニート

 「ニート」て言葉はあんまり好きじゃないんですが、その安直なタイトルが妙に気にかかりました。5篇からなる短編集で、そのうち2作が連作風になっていて、「ニート」な男が登場します。
 
 さて、ニートな人をどのように描くのかが気になったのですが、全然真正面から描こうとしていないんですね。普通に日常を切り取っただけの展開で、ニートを断罪しようとも、支持しようともしていない。それで「ニート」てタイトルをつけるとは凄いですね。
 淡々と流れていく日常は、逆にとてもリアル。それを綴る文章はサラッとあっさりしているんだけど、でも爽やかさは皆無で、読んでてすっごく後味が悪い。
 男女間、友人間の関係を描いているんですが、淡々と語るが故に人間的な感情が欠如していて、ちょっぴり自己中心的な言動のみが浮かび上がります。行間からは薄い空気感がにじみ出てきます
 その希薄な人間性こそ、なるほど「ニート」なものかも知れません。
 
 5篇めの「愛なんかいらねー」は完全にいっちゃってますね。浣腸マニアの男につきあわされる女。男を好きなわけでも、無理強いされてるわけでもないのに、流れでSMプレイを受け入れる。とんでもないプレイをサラッと普通ぽく語る文章も素晴らしいし、その「どうでもいいわ」感がとてもリアルで薄ら怖ろしく、読後に不快さのみが残る傑作ですね。
 とりあえず「スカトロ祭り」て語には参りました。
 
 芥川賞受賞作品も読んでみようかな。