本日の1枚 

 遅くなりましたが、ショック太郎さん(id:bluemarble)さんから頂いた、Blue Marbleのデモ音源の感想です。
 
 大野方栄 with Blue Marble / Masae Ala Mode 2
 
 
 今回は大野方栄さんのソロ名義。タイトルは「Masae Ala Mode 2」てことで、'83年にリリースされた大野さんのアルバムの続編という趣向なんでしょうか。
 11曲入りで、全曲カヴァー。しかも全曲に大野さんによるオリジナル日本語詞がついています。
 お恥ずかしいですが、原曲が何なのかほとんど分かりませんでした。メロディは聴いたことあるんだけどなぁ、て曲が多くて、ノドに何かが引っかかってるような思いをしております。
 
 例えば、4曲目『留守番電話』の歌メロはジョアン・ドナートヒキガエル』のカヴァーなんですが、演奏もアレンジも全く別モノになってるため、一聴しただけでは気付かないほどの変身ぶり。ドナート自身もアルバム「A Bad Donato」のなかで全く別アレンジの曲に料理していますが、この曲は遥かにそれを凌駕しています。いったん完全に解体、メロディを軸に再構築されていて、その作業を想像するとBlue Marbleの音に対する職人気質がうかがえますね。
 こんな感じでリコンストラクションされたカヴァーが多いのであれば、原曲を思い出せないのも無理がないのかな、と言い訳してみたりして。フランソワーズ・アルディさよならを教えて』のカヴァー、7曲目の『嘘は罪』は分かりやすいカヴァーでしたが・・・。
 
 前にデモCDをいただいたときの感想で、Blue Marbleの音と大野さんの歌声との相性の良さを書いたんですが、大野さんの歌声を前面に出したこの盤で、その印象はさらに高まりました。
 その醍醐味を噛み締められるのは、やはりリンダ・ルイス『Love Plateau』のカヴァーでしょう。タイトルが原題どおりであることから、この曲をカヴァーすることへのコダワリが分かりますね。こちらはもう完コピです。
 大野さんの声、誰かに似ていると思ってたんですが、なるほどコケティッシュさがリンダ・ルイスと瓜二つ。そこに水森亜土ちゃんの天衣無縫さをプラスしたよう、てのが僕の素直な印象です。
 
 すでに数名の方が感想を書かれてますが、「無国籍」感をBlue Marbleの魅力として挙げている意見が多いですね。僕も同感です。
 なんとなく細野晴臣さんの「泰安洋行」を思い出しました。エキゾさが似ているというわけじゃないんですが、複雑な音の組み合わせにも関わらず、どこかノホホンとした空気感に包まれてるところに同種の感触を覚えました。
 
 そんな異国情緒を味わうには、ボサ・タッチの『雨の中で』やラテン風味の『お熱なワタシ』などがいい感じなんですが、僕のベスト・トラックは9曲目の『右も左も』でした。
 サンバのリズムを基調としてカリビアンなトロピカルさに包まれた、どこか分からない南国の音楽。
 ズンとグルーヴィな芯を軸に軽やかな音が駆け巡り、大野さんの歌声が情感たっぷりに、でもサラリと絡んでくる、この熱いのか冷めてるのかハッキリしないバランスが素晴らしいです。
 
 心地良い洒落た楽曲ばかりだけど、じっくり聴くと細やかなアレンジの妙がもう溜め息モノです。複雑な音の組み合わせが全く嫌味に聴こえない、いやぁ、ポップ職人ですなぁ。
 
 大野方栄は、いや、Blue Marbleは天才です。