本日の1枚

 笙の音色をフィーチャーした盤を1枚。
 
 Kahimi Karie / Nunki (CD)

 新作をリリースする度に音響系への接近が強くなっていましたが、この新作でもその路線を踏襲。
 プロデュースはカヒミ自身が務め、作曲陣に大友良英(8曲)、ジム・オルーク(3曲)、ヤン富田(2曲)を起用。ジム・オルークは意外に結構ポップ(でもない?)な路線でしたが、大友良英の楽曲はもう現代音楽の領域に入り込んでいます。
 その大友氏の曲はもちろん、基本的に音数を絞りこんだ楽曲が続き、実験性に富みながらも繊細で禁欲的な空気が漂います。
 全体にそのトーンなので、アルバム1枚を聴き続けれるかはギリギリなところかもしれませんが、それを何とか支えてるのはカヒミのウィスパー・ヴォイス。
 そう、かつてのようなカヒミの囁き声が全編に渡って響いています。音楽性は大きく変われど、オールド・ファンにもグッとくるものがあるでしょう。
 
 音響系のオープニングにありがちなタイプの1曲目にはちょっとウーンと思いましたが、しめやかにフレンチな香り漂う2曲目『I'm in the rain』で一気に惹き込まれました。アコギと歌声のみで構成されるこの曲はヤン富田作で、なんとコーラスはドゥーピーズ、ギターは小山田圭吾
 水の効果音が印象的な『All is splashing now』、続く、爽やかなアコギの刻みからドヨーン系へと重圧がかかる『He shoots the sun』は、ビョークのような内に沈み込む世界観を感じました。
 ジム・オルークの『Night train』、『Mirage』はややどんより系ながらも割りと普通にフレンチ・ポップしてて、昔のカヒミ・ファンでもすんなり受け入れられそうです。
 中国語でつぶやく『CAMELIA』が結構気に入ってます。無音の重みと浮遊するカヒミの言葉の配置が素晴らしい。
 一転、軽やかな楽器の音色で構成された『You are here for a light』で、苦痛の中に快楽を見出した感じ。
 ラストの『歩きつづけて』は、ボーナス・トラックとのこと。他曲とは大きく雰囲気が異なり、キュートなギター・ポップ。これもヤン富田曲で、ドゥーピーズ参加。なんだかんだ言っても、やっぱこういう曲がいいや。