本日の1枚

 The Beatles / Love (CD)

LOVE (通常盤)

LOVE (通常盤)

 シルク・ドゥ・ソレイユのショウの舞台サントラとして、ジョージ・マーティンとその息子がメンバー公認のもと、ビートルズの音源をマッシュアップ(分解、合体、再構築)して制作したアルバム。
 賛否両論のこのアルバムですが、僕は素直に楽しめました。リミックス盤というよりも、面白いベスト盤という感じですね。
 
 究極の肉体芸を中心にミュージカルやオペラの要素を取り入れたサーカス集団、シルク・ドゥ・ソレイユの魅力の一つは、音楽の使い方の妙にあると思います。単に演者の動きと音楽をシンクロさせているだけでなく、その芸術性の高い世界観を作り上げる1役を担っています。
 このアルバムからもその世界観が十分に伝わってきます。クリアな音質とゴージャスなアレンジによる美しさは、その煌びやかさゆえに影の部分が強調されているように思えます。猥雑で毒々しくあり、それが逆に淫靡な美しさを放ち、エロティックな魅力さえ感じます。
 ビートルズの音源をめちゃめちゃにマッシュアップしたことを冒涜行為だとは全然思いませんが、「Love」と銘打ちながら、崇高さよりもゴテゴテした美しさで包んだ雰囲気こそがある意味冒涜的かもしれません。
 
 肝心の各曲については、高音質な音でめまぐるしく姿を入れ替えるコラージュなど、グルグルと音が渦巻く万華鏡のような様相を呈しています。「こりゃ面白い」と思いながらも不自然さはあまり感じないところから、相当な作りこみを感じますね。
 1曲目が『Because』てのも個人的にはツボを突かれた選曲ですが、それに続く『Get Back』が『A Hard Day's Night』の「ジャジャーン」てギターの音で始めるのには参りました。
 全曲ともそんな感じで、なんだかよく分からない気分になって楽しめます。ただ、それほど熱心なビートルズ・ファンでない僕としては、オリジナルの楽曲とどっちがどっちだか混ざってしまいそうで怖いです(笑)。