本日の1枚

 すでに風来坊さんも(http://d.hatena.ne.jp/huraibou/20070203)紹介されていますが・・・
 
 湯川潮音 / 冬のワルツ (CD)

雪のワルツ

雪のワルツ

 
 「冬」をテーマにしたミニ・アルバム。といってもあまり寒々しい音ではなくて、寒い日に暖房の効いた部屋で聴くようなタイプの楽曲が続きます。
 多くのCMソングで知られる昭和歌謡の作曲家、三木鶏郎の曲を取り上げてることが象徴するように、ノスタルジックな雰囲気に溢れたアルバムです。
 昭和歌謡な空気を持たせた曲といえば、どうしてもパワフルな躍動感を強くイメージしたものが多いと思うんですが、もちろんこの盤はそうではなくて、色褪せたフィルムを見るようにボンヤリした昭和の郷愁を想起させるようです。
 その懐かしげなボンヤリした空気が、独特の浮遊感を生み出しています。
 
 これまで主にプロデュースを手掛けていた鈴木惣一朗の手を離れることで、また違った方向性のポップさを手に入れたようです。
 初期作では不安定ながらも力強さを秘めているような感じだった彼女の歌声も、安定感を増すことでより凛とした輝きを放つようになってきたと思います。
 個人的には初期の微妙な不安定さが好きなんですけどね。
 
 オープニングの『冬のワルツ』は、三木鶏郎作品のカヴァー。ロシア童謡風の歌声とアレンジがなんとも懐かしげ。なんとなくパルナスのCMソング(甘いお菓子の〜お国のたより〜♪てやつ)を思い出しました。
 M-2『木の葉のように』は、バンジョーアコーディオンの音色がノスタルジックに響きます。ブラスで刻まれるリズムに「ラララ〜」て歌声がまた郷愁を誘います。
 M-3『おしゃべり婦人』は、バカラック風味のイントロから柔らかい和風ポップスへの流れがとても好きで、目立たない曲ですが一番のお気に入りです。
 M-5『木漏れび』は菅野よう子の曲で、ストリングスなどによる室内楽的なアレンジによる、穏やかな起伏の美しさに耳を奪われます。アルバム全体の雰囲気とは異質であるものの、このアルバムの目玉と言ってよいでしょう。