本日の1枚
Comus / First Utterance (CD)
- アーティスト: Comus
- 出版社/メーカー: Breathless
- 発売日: 2006/02/07
- メディア: CD
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1971年にリリースされた英国プログレッシヴ・フォークの珍盤であり名盤。
まずはインパクトの高いジャケに目を奪われますが、音そのものもジャケに負けない強烈さを発しています。
アコギにヴァイオリン、フルートなど、演奏される楽器からは「フォーク」的な要素を感じることができるものの、それらクラシカルな楽器の音色とは思えないアヴァンギャルドさ、アングラな雰囲気に満ちた音楽はどんなジャンルのものかと形容したらいいのか分からない。
どんよりとした空気と、突如としてそれを切り裂く激しい叫び。「ヒュー、ドロドロー」て音色のせいもあるでしょうか、おどろおどろしい雰囲気からまずお化け屋敷にいるような印象を受けます。
しかし、よく聴くとそこには「美しさ」が根底に横たわっていることに気付きます。
耽美的な静謐さとヒステリックな感情の高まり、鬱と躁が蠢き合う不安定な揺れはまさに狂気的で、まさに独自の世界観に貫かれています。
アート系ポスト・パンクな構成のオープニング曲『Diana』で幕を開け、幽玄な組曲構成の『The Herald』はプログレッシヴで美しさが際立ちます。
続く『Drip Drip』はこのアルバムの目玉と言える作品。穏やかなアコギのイントロを引き裂く感情的なダミ声。コロコロと不安感をかき立てるパーカッションと美しい女性コーラス、叙情的なヴァイオリンなどが好き勝手に絡み合い、その音の重なりが狂気的なウネリを生み出します。
パーカッションとフルートの音色を中心に官能的な世界を表現した『Songs To Comus』は、ジャズ・ファンクなグルーヴ感も持ち合わせているようで、この盤では一番のお気に入りです。
ラストを飾るのはそのまんま精神病者をテーマにした『Prisoner』。他曲と比べ起伏の少ないアレンジではあるものの、秘めた狂気とトリップ感がビシビシ伝わってきます。