本日の1枚
V.A. / 細野晴臣トリビュートアルバム (CD)
細野晴臣トリビュートアルバム-Tribute to Haruomi Hosono-
- アーティスト: オムニバス,□□□(クチロロ),ワールドスタンダード+小池光子,細野晴臣,ヴァン・ダイク・パークス,坂本龍一+嶺川貴子,コシミハル,リトル・クリーチャーズ,高野寛+原田郁子
- 出版社/メーカー: commmons
- 発売日: 2007/04/25
- メディア: CD
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坂本龍一や高橋幸宏、矢野顕子、コシミハルをはじめ、ヴァン・ダイク・パークス、ジム・オルークなど豪華メンバー参加のトリビュートアルバム。
カヒミ・カリィや嶺川貴子、レイハラカミ、口ロロ、畠山美由紀、寺尾紗穂といった、僕の好きなアーティストがずらりと並んでいるのも嬉しいところです。
はっぴぃえんど時代のモノから細野氏が手掛けた歌謡曲まで、選曲はかなりバラバラなんですが、なんとなく統一感があるのは、単にエレクトロニカ系のカヴァーが多いからだけではありません。
どの曲にも「さらり」とした空気感を強く感じます。
天才的なリズムやメロディに対する感覚を備えながらも、さらりと聴けてしまう細野氏の音楽。
参加アーティストたちが、各々の手法でその魅力を再構築しているようで、そこにまた各々の細野氏への敬意を感じます。
ディスク2枚組で、1枚目はいきなり本人が'73年に録音した『ろっかばいまいべいびい』のデモ音源で幕を開けます。
ヴァン・ダイク・パークスによる『イエロー・マジック・カーニバル』は、カリビアン風味のモンド・テイストが面白いところ。
坂本龍一+嶺川貴子による『風の谷のナウシカ』は、生音エレクトロニカ系なサウンドに、彼女のウィスパー・ヴォイスが映える逸品。じわじわと静謐に湧き出る音の粒に、彼女のキュートな歌声がふんわりと浮かぶ様は、どこか幽玄な美しさも湛えています。1枚目ではこの曲がベスト。
コシミハルによる『わがままな片想い』は、ピコピコとキュートなテクノ・ポップ。歌声もとってもキュートで、「ピ・ピ・ピ」とか言われるとたまんないですよ。
リトル・クリーチャーズによる『ハイスクール・ララバイ』は、この盤の中で最も印象的な曲。あのファニーなテクノ歌謡を激渋くジャジーな演奏でカヴァー。「なー!」はどうするの、て聴く前はドキドキしたりしてました。
スカパラによる『アブソリュート・エゴ・ダンス』は、スカのリズムにあわせて元曲に忠実に、そして熱くカヴァー。普通にいい感じ。
高野寛+原田郁子による『終りの季節』は、2人の歌声にグッと引き込まれました。以前、レイ・ハラカミがこの曲を見事にエレクトロニカにカヴァーしていたので、それと比べると音的には見劣りする感もありますが、歌声ではこちらに軍配が上がりますね。
miroqueによる『Omukae De Gonsu』は、ゲーム音もキュートなおもちゃ系エレクトロ・ポップに。
テイ・トウワ+ナチュラル・カラミティによる『ハニー・ムーン』は、ゆるーくラウンジーなエレクトロ・ポップに。細野風に歌おうとするヴォーカルが微笑ましい。
口ロロによる『北京ダック』は、ラテン歌謡風の味付けで合唱。面白さではピカイチで、ある意味で細野氏の影を一番強く感じました。
ワールドスタンダード+小池光子による『三時の子守唄』は、シンプルで温かみのある演奏に清涼な歌声が美しく映えます。エレクトロニカ系のカヴァーが多い中で、この素朴なカヴァーが逆に目立ってますね。
ディスク2枚目はヤノカミ(矢野顕子+レイ・ハラカミ)による『恋は桃色』でスタート。そもそもこの2人が大好きなんで、文句なしの逸品でした。美しくリリカルな電子音と彼女の歌声との相性はやはり抜群。
高橋幸宏による『スポーツマン』は、生音エレクトロニカな演奏でカヴァー。生ぬるく心地良い音に幸宏氏の歌声がまた心地良く響きます。
畠山美由紀+林夕紀子+Bophanaによる『ミッドナイト・トレイン』は、軽やかなパーカションを中心にソウルフルな歌声が混ざり合う、爽やかにファンキーなカヴァー。
コーネリアス+坂本龍一による『Turn Turn』は、1音ずつブツ切りにされてるような電子音で構成されるエレクトロ・ファンク。
といぼっくすによる『銀河鉄道の夜』は、チェロなどの管弦楽器でカヴァー。細かい部分まで元曲に忠実な演奏でありながら、全く違う印象を受ける面白さは印象的。
ウッドストック・ヴェッツ(ジョン・サイモン、ジョン・セバスチャン、ジェフ・マルダーらのユニット)による『蝶々さん』は、ルーツ・ミュージックにカヴァー。こういう音を普通に飲み込める細野楽曲にまた感心。
ヴァガボンド+片寄明人による『ブラック・ピーナッツ』は、トイ・ミュージック風にキュートにカヴァー。
たまきあや+谷口祟+ヤマサキテツヤによる『風をあつめて』は、リコーダーでインスト・カヴァー。素朴な音色が優しく響き、ちょっと一服、て感じ。
サケロックオールスターズ+寺尾紗穂による『日本の人』は、70年代風の柔らかな演奏の中で、異彩を放つパーカッションに耳を奪われます。ヴォーカルは男女とも素敵で、リピートして聴きたくなる点ではこのアルバムで一番。
ジム・オルーク+カヒミ+カリィによる『風来坊』は、アコギを中心にした穏やかな演奏にスティール・パンがエキゾな彩りを加える微妙なモンド加減が心地良いうえに、カヒミのウィスパー・ヴォイスがこの歌詞に絶妙に相性が良くて、まさに胸キュンな逸品でした。2枚目ではこの曲がベスト。
そしてラストを飾るのは、またしても細野氏本人のデモ音源。本人で始まり本人で終わる構成も心憎いですね。
どうやらトリビュート第2弾も予定されているようです。それも楽しみにしています。
それにしても、ベストが嶺川貴子とカヒミ・カリィ、という自分の進歩の無さがなんとも情けない・・・。