本日の1枚

 yanokami / yanokami (CD)

yanokami

yanokami

 矢野顕子レイ・ハラカミのユニット。
 以前からこの2人のコラボ曲を聴くたびに、矢野顕子の歌声とレイ・ハラカミの電子音の相性の良さを感じていましたが、ついにアルバムがリリースされました。
 収録曲の大半は矢野顕子の楽曲のセルフ(?)カヴァー。矢野顕子ファンにとってはなかなかツボを突いた選曲です。
 
 矢野顕子矢野顕子たらしめているのは彼女の歌声であり、レイ・ハラカミレイ・ハラカミたらしめているのは電子音であります。
 その2つの個性が強すぎるため、お互いの個性が主張しすぎてるように聴こえる曲もあります。さっきAmazonのレビューを見たんですが、矢野顕子の曲をレイ・ハラカミがリミックスしたよう、という感想がいくつかありました。これは言い得て妙で、歌声だけ聴けば矢野顕子の曲にしか聴こえないし、音だけ聴けばレイ・ハラカミの曲にしか聴こえません。
 ただ、その個性のぶつかりを楽しめるのがこのユニットの魅力の核でありましょう。前述のように、そもそも矢野顕子の歌声とレイ・ハラカミの電子音は相性が良いのです。耳触りの穏やかなレイ・ハラカミの電子音に矢野顕子のハネる歌声がリズムを与え、フッと浮かぶ矢野顕子の歌声を柔らかな電子音のふわふわ感がさらに押し上げているよう。
 あと特筆すべきは、矢野顕子のピアノとレイ・ハラカミの電子音もまた相性が良いこと。矢野顕子の跳ねるピアノの音色に電子音が負けてないのが凄いですね。
 
 矢野顕子デビューアルバムのA面1曲目、『気球にのって』のカヴァーから始まります。原曲のもっていた強烈なリズム感の代わりに、ウネウネした浮遊感が相応に強烈ですね。
 続いてヒット曲『David』のカヴァー。坂本龍一アレンジの最高峰と誉れの高いこの曲を取り上げた根性も好いですね。後ろの音がどうあれ矢野顕子矢野顕子だと実感。
 『終りの季節』は、細野晴臣の楽曲。レイ・ハラカミもアルバム「Lust」でカヴァーしてますが、そのヴォーカルを矢野顕子に差し替えたもの。微妙に違和感あり。ハラカミ・ヴォーカルのほうが良かったりして。
 『おおきいあい』は、僕の大好きなアルバム「Granola」から。ストイックなテクノ・サウンド矢野顕子の声とピアノに包まれて飲み込まれていくようなアレンジが素敵です。
 『Full Bloom』は、アルバム中では唯一のオリジナル新曲。柔らかな音とふわふわしたハミングが心地良い。
 『恋は桃色』は、細野晴臣トリビュート盤に入ってたアレです。2人の相性の良さを確認するにはこの曲が群を抜いているように思います。
 
 このアルバムで一番興味深いのは、やはりデルフォニックス『La La Means I Love You』のカヴァーでしょう。この2人の組み合わせからフィリー・ソウルが出てくるとは。で、かけ離れた楽曲を取り上げることで、逆にyanokamiとしてのオリジナリティが強まってるんですよ。レイ・ハラカミの作るトラックに矢野顕子が歌を乗せてる、て感じの他の曲と比べ、yanokamiのカラーを感じるんですね。今後もこのユニットが続くのであれば、こういう曲が出てくることを期待します。まずはやはりyanokamiオリジナル曲を!