本日の1枚

 植田ひとみ / 人生はカルナバル (CD)

人生はカルナバル(紙ジャケット仕様)

人生はカルナバル(紙ジャケット仕様)

 
 和ボッサ再発シリーズからの1枚。
 ブラジル音楽と日本の歌謡曲の見事な結晶と言うべきアルバムです。1977年のリリース。
 
 アドリニアン・バルボーサ、バーデン・パウエルなどのサンバ名曲を日本語詞でカヴァー。
 リズムや演奏はモロにブラジルしてるんですけど、基本的なアレンジは歌謡曲調で、でも時折またブラジルしてる繊細なアレンジが不意に響いたりします。
 ほぼ本格的にブラジルしてる演奏に、情念のこもった歌謡。なるほどこの感覚は、和なサウダージ感に他ならないように思えます。 
 
 ヴォーカルもまた演歌調であったりモロに歌謡曲しているかと思えば、ジャズ風に歌い軽やかなスキャットが飛び出したり、このアルバムの楽曲のように素敵な和風サウダージ感を醸し出しています。
 なんとなく水森亜土っぽい歌声で、これまたなかなかに素敵なのです。
 
 オープニングの歌謡ボッサ『11時の夜汽車』や2曲目の『雨の哀歌』(バーデン・パウエルのカヴァー)を最初に聴いたときは、そのイージーなムーディさに微妙な気もしましたが、3曲目を聴いて不安は吹っ飛びました。
 ジョアン・ド・ヴィオラゥンの曲に見事な日本語詞をつけた『酔いどれサンバ』。これがもう最高。酔っぱらってるようにフラフラと跳ねるエレピの音色と、くだをまくように歌うコケティッシュなヴォーカル。ファニーにグルーヴィなアレンジも絶妙で、マルコス・ヴァーリなんかが手がけたノヴェラものの音なんかが頭に浮かびます。
 軽やかなサンバ歌謡『オレンジ村で』でのキュートな歌声は、なんだか大野方栄みたいに聴こえます。ラストのスキャットの素敵で、歌声ではこの曲が一番素敵。
 『オレンジ村で』はカヴァーではなく、山木幸三郎が作曲しているのですが、同じく山木作の『メルヘン』も素敵なジャズ・サンバ歌謡で、特にグルーヴィなリズムなんかがカッコ良いのです。
 ラストの『他人同士のサンバ』は宇崎竜童の作品。あんまりブラジルしてませんが、迫力いっぱいのラテン歌謡でこれはこれでまぁカッコいいかな。