本日の1冊 ctの深い川の町

ctの深い川の町

ctの深い川の町

 都会の生活に躓き、帰郷してタクシー運転手となった男。その男の日常が淡々と描かれる。
 ちょっと気の抜けた文体にはユーモラスなセンスが溢れているが、描かれるどうしようもない現実からは、さりげない絶望感と悪意が滲み出ている。
 決して主人公に感情移入するわけではないのだが(いや、そもそも主人公からは感情が読みとることもできないが)、なんかとても「リアル」なのですよ。
 事件など何も起こらない、やる瀬ない日常。あくまでも穏やかな日常を描きながらも、パンキッシュなヒリヒリ感が伝わってくるのであります。