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 Minuano / ある春の恋人 (CD)

ある春の恋人

ある春の恋人

 
 尾方伯郎と(Lampの)榊原香保里による男女ヴォーカルなポップ・ユニット、セカンド・アルバムが出ました。
 前作もそうでしたが、ブラジル音楽やソフト・ロックシティ・ポップなんかを下地にしながら、聴いたことがあるようだけど実はどこにもなかったようなタイプのポップ・ソングが並びます。
 特に今作ではリズムがより明確になって分かりやすいポップ度が強くなったせいか、なんかこう90年代の渋谷系な音楽を聴いていた頃の感覚を思い出してしまいました。
 
 榊原香保里の歌声の何が好きかというと、ちょっとした声の震えが偶然に生み出す浮遊感が好きなんですけど、それがMinuanoの音楽のミネイロっぽい空気感に乗って、よりフワフワした感触になるのが心地良くって、でもちょっと居心地が悪くって、そんなのがとても好いのであります。
 微妙な憂いもどこか懐かしく響き、まぁともかく素敵なアルバムです。
 
 冒頭の『宵街』は、ミルトン・ナシメント系のブラジリアン・ジャズなテイストで、とってもグルーヴィ。オルガンなどの音色によるフワフワした浮遊感とちょいとしたキラキラ感がたまりません。
 『曇りガラスに街が流れる』は、柔らかくシティ・ポップ風なんだけど、ぼんやり穏やかな温もりとちょいとした煌めきが好し。なぜか何度も聴きたくなってしまう名曲であります。
 『月下夜話』は、洒落たグルーヴィさが素敵なブラジリアン・ポップ。シンプルだが厚い音の壁のうねりも好し。このへんがなんかこう、渋谷系を契機としてブラジルにのめり込んだ者のハートをグッと掴みますなぁ。
 『夜明けの冬』は、地味だがにじみ出るサウダージ感が好し。『ペーパームーン』は、レゲエなリズムの吸収法がこのユニットのつかみどころのない魅力を表してますね。
 『二十四時』は、グルーヴィさとヴォーカルの可憐さが素敵で、「和製」ソフロとはかくあるべき、みたいな気になりました。
 『夢のあと』は、他曲に比べるとカラフルさの控えめな静かなボッサ・ポップですが、じんわり響く度の高さでは逸品。こういう曲がさりげなく主張してるところに、良いアルバムであることを感じます。
 ラストの『ある春の恋人』を聴いていて、あぁこれはあくまでも日本のポップスであることを思い入りました。