本日の1冊 虐殺器官
- 作者: 伊藤計劃
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 2010/02/10
- メディア: 文庫
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て聞いて、てっきりマッチョな軍事SFだと思いきや、読んでみると印象は全く異なりました。
とても繊細なタッチで、どんな残虐なシーンもあっさりと描かれる。しかしそれは「クール」なのではなく、ある種の諦念を湛えた穏やかな視線を感じます。
悪意なしに殺人を繰り返す日々に罰と許しを渇望する主人公と、愛のため虐殺を引き起こし続ける男。
善悪の彼岸に、主人公は混沌とした世界の中で静かに家に閉じこもり、そして米国の平和の象徴たるピザを食べる。
全編に漂う「死」の匂いには、なんというか、非常に切迫した「リアル」さが伝わってきます。
文章の技巧力がどうとかいう以前に、ストーリー・テラーとしての能力に溢れていますね。