本日の1冊 エロマンガ島の三人

エロマンガ島の三人 長嶋有異色作品集

エロマンガ島の三人 長嶋有異色作品集

 6作品を収めた短編集。
 表題作は、エロマンガ島にいってエロ漫画を読む、という雑誌の企画にのった3人の男の物語。タイトル的に「笑える」お話かと思いきや、なんとも情けない悲哀に満ちた物語なのでした。
 予約録画を気にする男に象徴されるように、非日常を求めても日常から脱しきれない、さえない男たちの行動はユーモラスであるとともにとても切なくてグッときます。そしてやっぱ笑えます。
 だらだらとした日常を描く技量に優れた著者が描く非日常の世界は、日常的な穏やかさに溢れていて、とても生ぬるい心地良さでいっぱい。
 ラスト近くで現地の子供たちと歌う「ギャートルズ」のエンディング曲に、なんとも素敵な郷愁を感じてしまいました。これぞ日本人のサウダージ感。
 意外に素敵な作品でしたが、他の短編は正直あんまり・・・。