本日の1冊 天地明察

天地明察

天地明察

 「マルドゥック」な著者による時代小説。本屋大賞受賞も納得の面白さで、一気に読了してしまいました。
 時代小説でありながら斬り合いなどは描かれず、主人公はただ紙と筆をもって計算や観測に没頭する。しかし、それがとてつもなく面白い。
 細やかな描写はどれもとても映像的で、それ故に伏線として散りばめられていたそれらの断片が後で結合する際のカタルシスが絶品であります。見てもいない映像がフラッシュバックするかのような感覚に襲われます。これは凄いなぁ。
 彼方此方でベタ褒めされてる作品なのであえて苦言を呈すと、問題はヤマ場であるはずの改暦勝負の場面がイマイチ盛り上がりに欠けること。
 また根回しで巧く立ち回り勝利へと進む姿は、それまでの実直で穏やかな主人公像とはかなりかけ離れているしねぇ。
 ま、でも、エンターテイメントとして一流の作品であることは文句のつけようがありません。