本日の1枚 Turid

 Turid / Stars And Angels: Songs 1971-75 (CD)

Stars & Angels: Songs 1971-75

Stars & Angels: Songs 1971-75

 
 スウェーデンの女性フォークシンガー、トゥーリッドのベスト盤。1971年リリースのデビュー・アルバム「Vittras Visor」、73年のセカンド「Bilder」、75年のサード「Tredje Dagen」の3枚の音源から選曲された17曲が収録されています。
 北欧のヴァシティ・バニヤン、北欧のジョニ・ミッチェルなどと書かれたレコ屋の謳い文句に騙されるつもりで購入してみたのですが、1曲目の『Song』を聴き始めた瞬間に疑念が吹っ飛びました。
 
 シンプルなアコギの音色の中を、あどけなさを残しつつも清廉で美しい歌声が響いてくる。この瞬間、何度聴いても鳥肌が立ちます。
 グルーヴィに地を這うウッドベースやジャジーなアレンジのフルートなど、シンプルな印象を受けるが曲作りはとても凝りまくっている。
 時に消え入りそうな線の細い歌声なのに力強さを感じ、同時に沈み込むようなダウナーな深い闇も感じます。
 ドリーミーな美しい曲であるが苦悶に満ちた内省も漂う、アシッド・フォーク名曲でありましょう。
 
 ヴァシティやジョニ・ミッチェル、リンダ・パーハクスなどが引き合いに出されるのも納得、キュートなハイ・トーンの歌声は、時に儚げに時に力強く、美しい透明感が伸びていくと思いきや、ふわっと舞い上がったり、グネっと捻じれたりします。
 まさに天性の「天使の歌声」。ここ最近、PredawnやInnocence Missionとかを愛聴しておりましたが、申し訳ないが格の違いを感じてしまいました。
 
 楽曲のほうはファースト・アルバムはアシッド・フォーキー、セカンド以降はポップ度を高めるとともにトラッド志向も現れてきます。
 個人的にはやはりダウナーなメロウさが心地良くも不安げに響いてくるファーストに惹かれます。
 
 微妙に曲がりくねったアレンジの中を軽やかな歌声が浮遊する『Nyckelbanepigevisa』、穏やかにちょいとハッピーな曲調の『Going To Prison』、
 北欧エレクトロニカな感性の源流に触れたような錯覚に陥る『Vittras Vaggvisa』、民族的なグルーヴ感も湛えた『Crystal Shade Of Loneliness』、
 ジャジーフレンチ・ポップ風な『Play Macabre』、背後に響く小鳥のさえずりと同質なささやきヴォーカルにグッとくる『Tintomara』など、美しいがそれでけに終わらない良曲の目白押し。
 
 かと思えば、ファズ・ギターが鳴り響く曲もあったりします。
 リズミカルな『Och Sommaren Kom』にはサイケなカラフル感もあり、トラッド系の『Tom I Bollen』には確かな「ロック」を感じたり。
 フニャフニャした『Stjarnor Och Anglar』は、モンド的な視点でも面白い。
 
 あぁ、ファースト・アルバムをなんとか全曲聴いてみたい、という気持ちを抑えることができません・・・。
 
 
 Bilder
 
 
 Stjarnor Och Anglar