本日の1冊 京都宵

京都宵―異形コレクション (光文社文庫)

京都宵―異形コレクション (光文社文庫)

 井上雅彦監修の異形コレクション・シリーズから、京都を題材にしたホラー・幻想小説を集めたもの。
 なんとなく観光気分も味わえる作品が多く、もちろんホラーとしての質も決して低くはない。けれど、正直なところ、京都に絡める必要性、世界観が感じられないモノばかりだと思った。
 
 最も感動したのは、前の持ち主の仕業であろうか、文中に登場する京都弁の横に鉛筆でラインが引かれていたこと。(ちなみに、京阪三条駅上のブックオフで購入したもの)
 「しとくれやっしゃ」「なんどすけど」など、いちいち話し言葉の語尾にラインが引かれているのに加え、「二十一日の弘法さん」など、京都の年中行事にもチェックがされている。
 京都に越してきたものの周りの会話についていけない気がした人、とか、どんな境遇の人が「京都」を学ぼうとしたのかあれこれ想像するととても楽しい。本の内容よりも。
 そして京都を学ぼうとするなら、別にホラー短編集でなくてもいいんじゃない、と思うこともまた楽しい。