本日の1枚 坂本真綾

 坂本真綾 / グレープフルーツ (CD)

グレープフルーツ

グレープフルーツ

 
 1997年リリースのファースト・アルバム。プロデュースは菅野よう子
 実は僕が坂本真綾のことを知ったのはつい数年前でして、当然ながらこの盤はリアルタイムでは聴けていません。
 彼女は当時まだ17歳だったそうで、さすがに現在のように表現力豊かな歌声を聴くことはできませんが、若さゆえの瑞々しさ、甘酸っぱい青臭さなどはそれはそれで魅力的であります。
 歌声だけでなく本人による作詞もなんか可愛い。
 しかし菅野よう子の手掛ける楽曲はファーストからすでに完成の域に達しておりますね。アイドル歌手のデビュー・アルバムとは到底思えない凝りまくったアレンジに驚愕です。
 
 オープニングの『Feel Myself』は、アコギ中心でシンプルな印象を受けるポップ・ソングであるが、いつの間にやら複雑な展開を見せているアレンジは秀逸である。それもさりげなく。
 目立つ曲ではないが、爽やかな楽曲のイメージに伸びやかな歌声が普通に素敵な曲であります。
 
 『I And I』は、アップテンポにギター・ポップな曲であるが、モータウン風なリズムやなんかで始まり、流麗なストリングが絡んできたりするアレンジがまたまた秀逸。
 特にサビ部分では、疾走感あふれるベース、柔らかなホーンなどが交錯して舞い上がるアレンジが素晴らしい。
 このアルバムでは一番好きな曲なんですけど、「ラララー」なコーラスが子供の声だったら最高だなぁ、とか思ったりした。
 
 タイトル曲の『グレープフルーツ』は、メロウな浮遊感でいっぱいのアーバンな歌謡R&B調。こんなものもいけますな。
 『右ほっぺのニキビ』は、素直に洋楽の影響を受けていた70年代初頭のアイドル歌謡なポップさ。甘酸っぱい青春っぽさも好い。
 
 そして名曲『ポケットを空にして』は、サビのメロディのキャッチーさが凄い。
 マンドリンが鳴り響くトラッド風なイントロから参っちゃいますが、おもちゃ箱的なキュートさを湛えたアレンジもまた素敵です。
 
 ロックなグルーヴィさを感じる『オレンジ色とゆびきり』、ヨーロピアン・エキゾなテイストの『青い瞳』。後半のシンフォニックな展開もなんかスゴいぞ。
 しかしアレンジの凄まじさでは、『約束はいらない』が断トツですな。
 怒濤に押し寄せる3拍子の音の波、そして中盤でバグパイプが鳴り響く謎な展開など、とてもプログレッシヴな作品であります。
 
 軽やかなパーカッションも心地良いギタポ曲『My Best Friend』、爆発的に何か起こりそうな予兆のままドリーミーに浮遊し続けて終わる『風が吹く日』、柔らかなラスト『そのままでいいんだ』。
 どの曲からも可能性がこぼれ出ていて素晴らしいですね。
 
 
 I And I
 
 
 ポケットを空にして