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 Gutevolk / 太陽のシャンデリア (CD)

太陽のシャンデリア

太陽のシャンデリア

 
 西山豊乃のソロ・ユニット、3年振りの新作アルバム。
 所謂フォークトロニカな系譜に続くような音ではありますが、その繊細な電子音と生音の煌めきと同時に、トイ・ミュージックな可愛らしさを感じます。
 そのキュートさの裏には残酷さも見え隠れするような。美しく心地良いんだけど、混沌とした世界観が蠢いているような感じで。
 基本的には眩いキラキラ感がいっぱいで、タイトルどおりに「太陽のシャンデリア」なイメージであります。真昼のドリーミーさ。
 そして彼女のウィスパー・ヴォイスも、とてもキュートで甘美なドリーミーさに溢れています。
 
 冒頭の『picnic』は、イントロの柔らかにトイ・ポップ風味の音でもうグッときますが、続いて柔らかなウィスパー・ヴォイスが聴こえてくるとすっかり参っちゃいます。
 キュートに「パパパー」なコーラスもたまんない。
 ちょっと懐かしいタイプ、悪くいえば昔よくあったタイプの生音エレクトロニカ・ポップな作りでありますが、キラキラと微細に輝く音とリズム、そして歌声が本当に素敵であります。
 
 続く『cornflakes joyride』は、歌声の雰囲気が『picnic』と随分違うことにまずは驚かされます。もちろん同じ声なんだけど。
 やや凶悪なリズムと電子ノイズを飲み込む穏やかなアレンジがとても心地良い。
 
 『garland garland』は、アコースティック楽器の煌めきが眩しい牧歌的に玩具箱風の曲ですが、これはまた「ラララー」な歌声がいいよなぁ。反則だよなぁ、こういうのって。
 『pupa』は、耽美派シューゲイザー系の甘い音の波が心地良い。
 『pio』は、下手っぴなリコーダーのフレーズが繰り返されることで産まれるキュートに軽やかなグルーヴ感が好い。実際にリズムを刻むアコギの紡ぎもまたミニマルな心地良さを。
 
 『taiyo no uta』は、ラウンジ・ポップな緩やかさにジェントルかつ爽やかな男女ヴォーカルが素敵。おもちゃっぽいラテンのリズム、響きがまたキュートすぎる。
 『illuminations』は、小さな電子音の粒と小さなつぶやきが幾重にも織り重ねられて築き上げられたキラキラしたウォール・オブ・サウンドに包まれゆく快感を。
 
 『I am rain』は、ぷにょぷにょした感触とカラフルな色合いによる浮遊感たっぷりのサイケデリックさが素晴らしい。後半に唸りをあげるリズムもまた混沌とした世界観を盛り上げる。
 『hinagiku』は、なんとなくブライアン的なポップさを感じます。とてもキラキラした生音エレクトロニカ・ポップな「スマイル」。
 
 ラストの『wonder eden』は、いきなり「パパパー」で始まっちゃってグッときましたが、牧歌的なサウダージ感、柔らかな日差しを感じるポップさが素敵ですなぁ。
 ブラジルでもなくカリフォルニアでもなく、日本の太陽の下で聴くサイケ・ポップ絵巻。
 
 
 picnic