本日の1枚 My Bloody Valentine

 My Bloody Valentine / Glider (CDS)

Glider

Glider

 
kobbadiva: 名アルバム「Loveless」の直前、1990年にリリースした4曲入りのシングルです。1曲目の『Soon』はアルバムにも収録されていますが、他の3曲はアルバム未収録なので初めて聴きましたが、埋もれてしまうにはもったいない完成度がありますね。
kobbanova: そんなことより、この『Soon』の重要性を知っているか?
kd: 「Loveless」ラストの曲ですね。いかにもシューゲイザーなフィードバック・ノイズの響きも、夢見心地なヴォーカルの浮遊感もとてもいいですね。マイブラの代表曲に挙げる人も多いとか。
kn: 馬鹿者! そんなことはどうでもいいんだよ。
kd: (???)
kn: 一番大事なのは4つ打ちのリズムを使用したことだ。
kd: でもプライマル・スクリームとかがダンス・ミュージックを大胆に取り入れたのも同じ頃じゃなかったですか。
kn: 違う! 違う、違う、違う!
kd: 何が違うんですか。
kn: 当時の日本のギタポ・ファンにとって、マイブラは「神」だったのだ。
kd: はぁ。
kn: いいか、クラブ文化が定着していなかった時代には、音楽ファンは聴いてる音楽のジャンルで明確に色分けされていたんだ。ロック・ファンは黒人音楽を聴かないし、その逆もそうだ。黒人音楽ファンの中でも、ディープなソウル・ファンがニュー・ソウルを小馬鹿にしたり、ヒップホップのネタに使われるのを異様に嫌がったりとかな。
kd: 今でも老舗のジャズ・レコード屋はそういうとこありますね。
kn: 話を戻すと、ギタポ系のアーティストがダンス・ミュージックに接近していくことを、当時の日本のファンはあまりいい眼で見てなかったのだ。
kd: でも、そもそもジャングリーなギタポ・ソングの多くはモータウン風のリズムを取り入れたりしてますが。
kn: そんな細かいことはどーでもいいんだよ。大事なことは4つ打ちかどうかなんだよ。
kd: どーでもいいですかねぇ。
kn: ともかくギタポ界が転換期を迎える中で、オールド・ギタポ・ファンの最後の心の拠り所が「神」たるマイブラだったんだよ。その「神」が久々に降臨した待望の新作が4つ打ちだったとは・・・。
kd: それで、kobbanovaさんはショックを受けたんですか。
kn: いや、ざまぁみろ、て思ってたよ。だって俺はギタポ・ファンじゃなかったもん。
kd: おいおい・・・。
kn: ファンの気持ちを切り替えて、続くマンチェスター・ムーヴメントのスムーズな受け入れを促したという点でも、このシングルは非常に重要なのだ。
kd: ちなみに『Don't Ask Why』を裏名曲として挙げる人も多いですね。つかみ所のない浮遊感も、ケヴィンのやる瀬ない歌声もとても素敵です。
kn: この曲だと、小さな音量でひっそりと唸っている女性コーラスが好いな。消え入りそうな儚さがたまんないよ。しかし、アルバム未収録曲を裏名曲とかいって重んじるファンの姿勢はなんか鬱陶しいぞ。
kd: kobbanovaさんがマイブラで好きな曲は何ですか。
kn: シングル「You Made Me Realize」B面の『Slow』だな。あれは裏名曲だ!
kd: ・・・。
 
 
 Soon
 
 
 Don't Ask Why