本日の1冊 四畳半王国見聞録

四畳半王国見聞録

四畳半王国見聞録

 四畳半の内部に拡張していく妄想の世界。期待どおりの森見節を堪能できました。
 阿呆な学生たちが繰り広げる閉塞した青春譚は、馬鹿馬鹿しい以上にキュンと切なく哀しい。
 数学で恋人の出現を証明する男、モザイクを除去する能力をもつ男などが展開する阿呆なファンタジックさは、幸福な青春を過ごした者には決して実感できないであろうリアルさに満ちてもいる。
 過去の森見作品も含め、微妙なリンクが散りばめられているのにもまたニヤニヤしてしまう。
 そしてその世界観もさることながら、軽妙かつ偏屈にユーモラスな文体の妙もまた期待どおりのものでありました。