本日の1冊 シューマンの指

シューマンの指 (100周年書き下ろし)

シューマンの指 (100周年書き下ろし)

 冒頭に提示される大いなる謎。その謎を回想していく形式で、シューマンに惹かれた若者たちを描いた青春ミステリーな趣でストーリーは展開していく。
 しかし、そこで掘り進められるシューマンを巡る音楽論はかなり深い。
 というか、クラシック無知な者からするとその音楽論が的を得ているのかどうかも分からないんだけど、音楽に絡まる心理描写の見事さにはグッと惹き込まれました。
 そして中盤からはミステリらしい展開となるが、そのあたりから耽美な雰囲気が漂い始め、殺人の場面では何かこう幻想小説のような美しいドリーミーさが素敵でありました。
 ラストのどんでん返しはミステリとしては微妙だけど、幻想小説のオチとしては正しい。