本日の1枚 PIZZICATO ONE

 PIZZICATO ONE / 11のとても悲しい歌 (CD)

11のとても悲しい歌

11のとても悲しい歌

 
 2009年に出版された著書「マーシャル・マクルーハン広告代理店」の裏表紙に、「本書は・・・、未だ作られていないソロ・アルバムの企画書であり、・・・」とあった。
 同書は70年代前半までの音楽を紹介したディスクガイドであり、もしソロ・アルバムが同書のイメージで作られたら、、、と想像していたのですが、本当にそのイメージどおりの音が聴けるアルバムがリリースされました。
 
 11人のヴォーカリストを迎えたカヴァー・アルバムで、いわゆる名曲中心に取り上げられています。しかも、目新しさや派手さは皆無で、シンプルな演奏でじっくり歌声を聴かせる曲ばかりであります。
 しかし、その簡素なアレンジが凄まじく奥深いのです。ほろ苦い味わいが非常に強い。そして、苦さの中にかすかな甘みもある。
 終わった恋愛など過去を振り返ったりするような曲が多いのですが、なんと言うか、自分の人生を冷静に見つめる視線や距離感がにじみ出ていて、それがとてもリアルに感じられるのです。そんなアレンジ。
 
 まぁ言ってしまえばジャジーなんだけど、その音数のシンプルさが信じられないくらい音が豊かに聴こえてくる。沈み込むようなとろーんとした気だるさも、重苦しさと同時に心地良さを感じさせる。
 そこにフィーチャーされる渋みのある歌声の数々。
 『Imagine』を歌うマリーナ・ショウの声の枯れ具合にまずはしびれましたが、『If You Went Away』のマルコス・ヴァーリも年齢相応の渋みが増している。『Maybe Tomorrow』のクリストファー・スミスの声も泣かせる。
 お気に入りは、アブストラクトに幕開けサビでポップさが訪れる『Bang Bang』のポエトリー・リーディング、木漏れ日系な『A Day In The Life Of A Fool』とかかなぁ。
 
 ま、けど、『A Little Bit Of Soap』でのウッドベースのグルーヴィさや、『I Wanna Be Loved By You』のヒップさ、そしてモロにソフト・ロッキンな『Suicide Is Painless』なんかに惹かれる気持ちも強い。
 自分に正直に言うと、本当はもっとポップなものを聴きたいのだ。歳をとってもやっぱり僕は今でも『Happy Sad』や『Sweet Soul Review』とかが好きなんだもの。
 
 
 Imagine feat. Marlena Shaw