ここ数日で読んだ4冊

 「やりたいことは二度寝だけ」

やりたいことは二度寝だけ

やりたいことは二度寝だけ

 会社員&小説家の津村記久子さんのエッセイ。日常をダラダラと書き連ねるユルさが好い。無理のある奇矯な視点などなく、ほんのわずかにズレた着眼点に共感を抱く。モリッシーの言葉とドラクエを比較したりとか。
 「ピッチャーびびってるヘイヘイヘイ」とオフィシャルに歌いたいがために野球をやりたいとすら思う、という一文に参った。
 
 「遠乃物語」
遠乃物語

遠乃物語

 遠野から「遠乃」へ迷い込んだ、台湾帰りの民俗学者と地元の学生。パラレルワールドで発生する様々な怪異は、現実世界の昔語りと呼応する。
 ホラーよりもSF色が強いが、不安定な世界観が発する違和感がじわじわと覆ってくるような感覚がお見事。
 
 「ギッちょん」
ギッちょん

ギッちょん

 時系列と空間にとらわれない流れにまずは戸惑う。普通に切なく、痛々しく、あるいは微笑ましい断片たちが、実験的であることすら拒むような変貌を遂げ続ける。
 久々に読んだこのような方法論の小説は、正直ちょっと苦手だ。
 
 「モナ・リザの背中」
モナ・リザの背中

モナ・リザの背中

 絵の中に迷い込んでしまう「先生」の冒険譚。現実と絵の世界を行き来する先生と、その弟子「アノウエ君」との問答が素敵すぎる。
 名画の中を彷徨っているかと思えば、気付けば現実世界でマグロの解体ショー。そんなスラップスティックな展開を、ユルいけれど哲学的な会話がグッと抑える。読後感も好し。