本日の1枚 Art Of Noise

 id:bluemarble さんの「思い出のレンタル日記」に便乗して、僕も中学生の頃の思い出から1枚。僕が音楽を聴くことにハマっていったキッカケは『スネークマンショー』でした。「カッコいい」とかじゃなくて、「面白い」からのめり込んでいったんですね。
 ちょうどその頃、関西ローカルで深夜に放送していたテレビ番組で、すっごく好きだったお笑い番組がありました。『投げやり倶楽部』とその後続の『どんぶり5656』。まだ無名だった頃の竹中直人やシティ・ボーイズがシュールなネタのコントを披露していて、ベタな関西芸人しか知らなかった中学生には、その笑いの感性が『スネークマンショー』的に思えて、とにかくすっごく好きだったんです。
 さて、その2つの番組のどっちだったかは忘れちゃったけど、CM前にビデオクリップぽく流れていたのが、アート・オブ・ノイズの『Moments In Love』。花火の映像を背景に、アンビエントなエレクトロニック・サウンドが流れる様がたまらなくカッコ良くて、もちろん曲名を知ったらすぐにレンタル店に走りましたよ。

 タトゥーが完全に消え去った後もベルセバを手掛けたりとか、地道にプロデューサー活動を続けているいるトレヴァー・ホーン。彼が'83年に立ち上げたZTTレーベルの第1弾としてリリースされたのが、このアート・オブ・ノイズ
 高価だったシンセサイザーのフェアライトCMIの音色を中心に、様々な「音」のサンプリングから構成されるサウンドは、まさに「騒音の芸術」だ、と無知な中学生は感動して聴き入っていたものです。
 まだサンプリングを取り入れた音楽が少なかった時代で、既存の音をわざわざ解体して、また再構築するという作業に、革新性とともに音楽の可能性を見たような気がしてました。それは決して夢物語ではなく、サンプリング技術の発展は、おそらくこのユニット無しには歩みが遅れたことでしょう。
 フェアライト独特の幻想的な音色を活かしたアンビエント感たっぷりな『Moments In Love』が一番のオススメ曲。美しさと心地良さが抜群です。テンポは遅いのにテクノ・ポップのカラフルさが失われていないことも素晴らしい。攻撃的なマシナリー・ビートに奇抜なサンプリングの配置で構成された『Beat Box』は、昨今のブレイクビーツものよりも遥かに先鋭的に思えます。