本日の1本 ガス人間第1号

 さて、人体実験といえば、一昨日の日曜日にこんな映画を観ました。
 『透明人間』、『美女と液体人間』に続く東宝の何とか人間シリーズの第3弾。

ガス人間第1号 [DVD]

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 銀行強盗を追う刑事は、美しき舞踏の師匠・藤千代に目をつける。彼女は強盗犯・水野に愛されていたのだが、なんと、水野は身体を自由に気体化できるガス人間であった、、、てストーリーです。
 上のストーリーだけ読むと全くアホらしい映画に思えますが、意外や意外、ドラマ性の高い「泣かせる」作品でした。
 マッド・サイエンティストの人体実験で生まれた「ガス人間」は、その驚異的な能力で社会に復讐するとか、そんな大きな事は考えてません。彼は踊りのお師匠に夢中になっていて、彼女の踊りの発表会のために銀行強盗を働いて金を貢いでいるのです。
 彼の望みは彼女が踊りの世界で成功することだけ。世界を恐怖に陥れる力を持ちながら、なんとも肝っ玉の小さい男ですね。
 ガス人間と踊りのお師匠、刑事とその恋人の新聞記者、この2組のカップルを中心にストーリーは進んでいきます。愛のためパワフルに突っ走る刑事の彼女と、黙って相手の愛を受け入れ続ける踊りのお師匠。この対比が実に上手く描かれています。ガス人間てアホな設定は置いといて、普通によくできた恋愛ものなんです。
 印象に残ってるのは、ガス人間はもう悪さをしないようだから、放っておいたらいいんじゃないかという議論になったときの刑事の言葉。
 「公金横領などをガス人間の仕業として、犯罪を犯す人が出てきている。ガス人間という存在そのものが社会不安を引き起こすんだ。」
 この痛烈な社会批判の精神を、『ガス人間』なんてアホらしい映画で発揮している東宝に拍手を送りたい。