本日の1枚 Milton Nascimento

コーリッジ

コーリッジ

 ブラジル内陸部に位置するミナス・ジェライス州。ミナス・ジェライスとは「総合的な鉱山」という意味で、その言葉どおり金、銀やダイヤなど様々な鉱物の産地です。
 もともと住んでいたのはインディオであったが、鉱山を経営するポルトガル人たち、財を求めてバイーアからやってきた黒人たちがやってきて、結果として、多種多様な文化が入り組んだ混血文化が生まれました。
 その混血性をモロに反映したミナスの音楽は、南米独特の民謡にアフリカンなリズム感覚、教会音楽風のメロディが混ざり合っていて、奇妙な浮遊感と荘厳な美しさを湛えています。
 ミナスの代表といえるのがミルトン・ナシメントでしょう。リオの新しい風をミナスの混血的感性で再構成したサウンドは、とてもユニークで美しい。
 これは'68年から'69年にかけてCTIで録音したアルバムで、米国進出の1作目となった作品。ピアノにハービー・ハンコック、オルガンにデオダート、パーカッションにアイアート・モレイラ、ヴォーカルにアナマリアが参加しています。
 デオダートによるものなのでしょうか、多数のヴァイオリンやフルート、チェロ、トロンボーンなど、オーケストラ編成でのアレンジが特徴的。そのオーケストレーションが、ミナス独特の浮遊感をさらに高めています。
 空を仰ぎ無限に広がっていく空間、意識の拡散を感じるよう。
 低音からグーッと伸び上がるミルトンのファルセットもまた、曲に負けず美しく、力強い。
 スタンダード・ナンバーとなった曲を多く収録していますが、ミナスの特徴を強く感じるのは『Vera Cruz』。教会音楽の影響色濃い音の重なりと美しさ、そして何より、雲が漂うような浮遊感に心が開放されていきます。