第13回セレクト合戦 勝手にレビュー 風来坊さん編
お題セレクト、風来坊さんのテーマは「Caravan」。
なんと、全曲デューク・エリントンの「キャラヴァン」なんです。
全曲同じ曲のセレクト、僕もこれまで考えなくはなかったのですが、特色のあるカヴァーを集めたところで、どうしても退屈になってしまうことが避けられないように思えて、なかなか手が出せずにいました。
風来坊さんの集めた「キャラバン」は、ただ単に多彩なだけではなくて、1曲1曲どれもが単体で聴かせる魅力に溢れていて、通して聴いても全く飽きることはありませんでした。これは本当に凄いことだと思います。原曲の懐の深さと、風来坊さんの選曲センスに因るものでしょう。と言うか、これだけのカヴァーを持ってることが凄いですね。
もちろん「キャラバン」は何度も耳にしたことはあるものの、ジャズに素養の無い僕は、デューク・エリントンの曲だということすら知りませんでした。あまりジャズっぽくない(そんなことないですか?)し、エキゾチックさが際立っているので、マーティン・デニーか誰かの曲だと思ってましたよ。
収録されている演奏者は、
01. ボストン・ポップス管弦楽団&デューク・エリントン
02. エラ・フィッツジェラルド
03. ローランド・アルフォンソ&ザ・スカタライツ
04. ベルリンフィル・12人のチェリスト達
05. ランバート、ヘンドリックス&ロス
06. 4ジャイアンツ・オブ・スイング
07. マーティン・デニー
08. 細野晴臣
09. チェット・アトキンス&レス・ポール
10. 佐藤允彦
11. ベルト・ケンプフェルト
12. ニューヨーク・ヴォイセズ
(01) は、まずは本人の演奏から。この荘厳な雰囲気は、壮大なキャラバン叙事詩の幕開けにピッタリですね。その厳かな空気が、後半のピアノの登場で、一気にヒップなものに変わっていく瞬間がとてもカッコ良いです。
(02) は、威厳をたたえた歌声と、そのご機嫌を伺うかのような演奏がいいですね。
(03) は、スカなカヴァー。はは、スカパラじゃなかったんですね。ズンと腰にくる太い音がカッコ良いです。これは欲しいなぁ。
(04) は、普段は全く縁の無いクラシカルな楽曲ですが、宙を自在に彷徨う音の広がりと、意外なグルーヴィさに驚いています。
(05) は、今度はヴォーカリーズで。「いやぁ、あっは〜」てアラビック(?)な声をあげる女性ヴォーカルがヘンテコでコケティッシュで素晴らしい。これも欲しいなぁ。もち、これが一番のお気に入りです。
(06) は、カントリーちっくにスウィングしていく盛り上げ部がいいですねー。スティール・ギターが挿入されるヘンテコ感も素敵ですし。このアッパーな雰囲気と(01)が同じ曲だとは、なんだか凄いなぁ。
(07) は、出ました、マーティン・デニー!導入部の熱帯雨林なモンドさが、クールなジャズ・サウンドに一気に展開するアレンジが面白いですね。後半のパーカッション・ソロとか、何がなんだか分からない胡散臭さも素敵です。
(08) は、このセレクトでは、唯一耳にしたことのある曲です。アトム・ハートよりもずっと前に、こんなモンドなテック・ジャズが存在していたことが誇らしい。ヴォーカルもいい感じで、やはり個人的にはこれが最高だと思ってます。
(09) は、ゆるいギターの響きがいいですね。南国のスウィング感。
(10) は、チェンバロの音色に圧されます。ヴォコーダー越しのロボ声ヴォーカルを加えたら面白いことになりそう、とか空想して楽しんでます。
(11) は、クールなヒップさと猥雑な雰囲気がキャバレーしてて好いですね。コーラスもナイス。
(12) は、コーラス・ワークの妙に唸らされます。高速のスキャットがカッコいい!よく聴くと音はシンプルなんだけど、幾層にも厚みのあるコーラスのゴージャスさに圧倒されっぱなしです。
↓風来坊さん本人の解説はこちら
http://d.hatena.ne.jp/huraibou/20020103