本日のひとりごと

 風来坊さん(id:huraibou:20060121)の父君が亡くなられたそうで、お悔やみを申し上げます。
 ふと、自分の父親のことも少し思い出してしまいました。
 僕の父は6年前に逝ってしまったのですが、いつの間にか父のいない日常に慣れきってしまい、父のことを思い出すこともほとんどなくなってしまっています。
 
 スティングの自伝に、父親と自分の「手」が似ていることに驚いた、という箇所があります。僕もこれと同じ体験をしました。
 父が末期ガンと告知され、闘病生活に入ってからのこと。
 父は僕よりもずっと背が低くて丸々としていて、仕事以外ではギャンブルのみが趣味という人で、それまでの30年間、父と僕は外見も内面も全然似てないと思ってました。
 ところがある日、ふとベッドの父の手を見ると、僕の手とそっくりなことに気付いたんです。手の形、指の形、爪の形。細かいところまで似ているんです。
 そのことを興奮気味に話す僕に、「足もそっくりなんやで。」と父は嬉しそうに言いました。靴下を脱いで見比べると、本当に足もそっくりでした。
 中学生ぐらいになってからドンドン遠くなっていた父との距離が、その瞬間に一気に縮まったような気がしました。やっぱり肉親なんだなぁって。
 それから数ヵ月後、棺桶に入ったときの父の手は、抗ガン剤の副作用のせいかパンパンに膨れ上がっていて、もう僕の手とは似ても似つかない姿に変わっていました。でも、指の先についてる爪だけは、まだ僕のと全く同じ形をしていました。
 
 わずか6年で、父の顔すら記憶がぼんやりとすることもあるようになりました。だけど、あのときの父の爪の形は、今でもはっきりと思い浮かべることができます。だって、自分の指の先を見れば同じのがあるんですから。