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 ビューティフルハミングバード / 空へ (CD)

空ヘ

空ヘ

 
 鈴木惣一朗をプロデューサーに迎えたメジャー・デビュー盤。
 田畑伸明のアコースティック・ギターが紡ぐサウンドに、小池光子の清らかで優しい歌声が響く、非常にシンプルなつくりの楽曲。
 そんな感じの、オーガニックが売りのアコースティック・デュオは多々ありますが、この2人は何かが傑出しています。
 
 まずとにかく無駄のない音。
 と言ってもストイックな空気はなく、最低限の音数で、とても豊かな表情を見せています。
 肌寒さと暖かさを同時に感じるような音は、光あふれる色彩感覚も備えています。
 
 そして何より、すべてを包み込むような包容力を湛えた歌声。
 単に優しげなだけではなく、その根底には哀しさが横たわっているようで、その寂寥感の底から静かに慈愛が溶け出しているよう。
 水墨画の世界から光と色が輝き出すような雰囲気。
 
 なんとなくヴァシュティ・バニヤンな世界感は、鈴木惣一朗の手腕によるものなのでしょうか。
 
 久々に出会えた、全曲通してじっくり聴き入りたいアルバムです。
 特にお気に入りは『そっとみていよう』。音よりも無音のほうに圧倒的な存在感を感じる、この空気に対する感覚が素晴らしい。