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 Vashti Bunyan / Just Another Diamond Day (CD)

Just Another Diamond Day

Just Another Diamond Day

 
 2000年にこの再発CDがリリースされるまでは、ほぼ無名に近い人であったはずなのに、いつの間にか英国フィメール・フォークを代表するシンガーとして語られるようになってますね。
 これは1970年にリリースされたファースト・アルバム。その後35年の歳月を経て突如脚光を浴び、2005年にセカンド・アルバムをリリースすることとなりました。
 
 プロデュースは、フェアポート・コンヴェンションやドノヴァンを手掛け、ニック・ドレイクを見出したことで知られるジョー・ボイド。
 演奏にはフェアポートやインクレディブル・ストリング・バンドのメンバーらが参加し、穏やかで柔らかい、美しい牧歌的なサウンドを聴かせます。
 アコギを中心としながらも、バンジョーフィドルマンドリン、ピアノ、さらにストリングスやリコーダーなど多彩な音数で彩られているんですが、その彩りはとてもシンプルで、素朴な味わいに溢れており、普遍的な美しさを感じます。
 
 そして何より、彼女の歌声の素晴らしさ。
 いわゆるウィスパー・ヴォイスなんですが、女性的な可愛らしさもあるものの媚びはなく、清楚で可憐な輝きを感じます。透き通るように澄んでいて、美しく、消え入りそうに儚い歌声。優しさと同時に、強い孤独感を醸し出します。
 当たり前のことなのかも知れませんが、やはりまた英国フォークの中にネオアコなどの音楽の源流を感じてしまいます。
 
 『Diamond Day』は、ほのぼのと柔らか、でもやや寂しげな音色に、儚げで美しい歌声が響く、オープニングに相応しい曲。
 『Glow Worms』は、アコギと歌声のみのシンプルな構成で、美しい寂寥感がジーンときます。
 『Lily Pond』は、お馴染みの童謡『キラキラ星』(元はフランスの古謡ですね)の替え歌。可愛らしい小品ながら、キラキラと凝ったアレンジが素敵です。
 『Timothy Grub』は、ネオアコな味わいの逸品。繊細な音の重なりと、線の細い柔らかな歌声がとても素敵で、一番の気に入りです。
 『Swallow Song』のような、のんびりと壮大に響いてくるオーケストレーションなどのアレンジもまた面白いところ。
 ポップな『Come Wind Come Rain』、リコーダー・ファンにはたまらない『Rainbow River』など、捨て曲無しのまさに名盤だと思います。