本日の1枚 藤竜也

 藤竜也 / Carnaval -饗宴- (CD)

CARNAVAL-饗宴-(紙ジャケット仕様)

CARNAVAL-饗宴-(紙ジャケット仕様)

 
 かの名優、藤竜也1984年に吹き込んだサンバ・アルバム。
 なんと、わざわざ現地ブラジルまで出かけて録音したそうである。というか、ブラジルに行きたくてアルバム制作を思い立ったそうである。
 
 曲を聴いてまず驚いたのは、藤竜也の歌声。
 なんとなく渋い歌声を想像したんですけど、全く正反対に、ナヨナヨした女性的な歌声なんですね。しかも、お世辞にも上手いとは言えない。というか、下手クソと言っても過言ではない。まぁ、それ故にヘタウマな味わいも無きにしもあらず。
 
 作家陣には加藤和彦松岡直也、大野雄二などの顔ぶれを揃え、さらに演奏には現地のミュージシャンを起用するなど、その豪華がなんとも素晴らしい。
 当然、楽曲も演奏も素晴らしいものなんですが、如何せん歌声が・・・。
 
 また、英・ポルトガル語のタイトルに添えられた日本語の副題がまた素晴らしい。「ラグ・タイム」には「微睡」とか。全部2文字の副題を並べた挙句、ラスト曲だけ平仮名5文字の「ありがとう」。なんで「謝意」とかにしなかったのだろう。そういう細かい謎な部分に、モンド的なものを感じて嬉しく思います。
 
 オープニングの『紐育』は、ごく普通のボッサ歌謡ですけど、きめ細やかなアレンジには耳を引くものがあります。
 ストリングスなどの味付けが地味に素晴らしい、軽やかなサンバ歌謡『山師』。歌の途中に入れた笑い声にグッとくる、ノスタルジックな雰囲気の『微睡』。爽やかブラジリアン・ブリーズな『女神』。リズムの間合いがハッと息を飲むほど素晴らしいサンバ・ポップ『饗宴』。
 なかなかの佳曲が続いた後、ラストには、穏やかなサンバのリズムに乗せて「ありがとう」を各国の言葉で綴る『ありがとう』。この微妙なモンド感が好いのである。
 
 一番のお気に入りは、メロウ・ブラジリアンなシティ・ポップ『夢枕』でした。滑らかなエレピの音色も素敵だし、随所に挿入されるビリンバウもいい味出してます。哀愁あるメロディも好しの名曲ですが、如何せん歌声が・・・。