本日の1枚 Minuano

 Minuano / Love Logic

Love Logic

Love Logic

 
 パーカッショニスト尾方伯郎が榊原香保里(Lamp)をヴォーカルにフィーチャーしたユニット、ミヌアノのファースト・アルバム。
 尾方伯郎はブラジリアン・ジャズなどの音楽的背景を持っているそうですが、そこに榊原香保里の柔らかくコケティッシュなヴォーカルを投じることで、独特なポップ感を醸し出しています。
 
 榊原香保里の歌声って、ちょっと不安定さがあるじゃないですか。さらに尾方伯郎が手掛けるメロディにも揺らめきがあって、ヴォーカルがユラユラふわふわと宙を漂うような印象を受けるのです。
 「ミナス風」と書かれているレビューをいくつか見たのですが、ブラジリアンなリズムを下地にしたグルーヴ感に全体にぼんやりとソフトなアレンジも施されており、前述のとおり歌声とメロディの揺らぎから、確かにミナス風な浮遊感、ドリーミーな美しさを感じますね。
 
 基本的に1970年代のクロスオーヴァー(デオダートとかね)な耳触りの音ですが、曲によってソフト・ロッキンだったり、シティ・ポップ風だったり。細やかなアレンジにも職人的な作り込みが光ります。
 ただぼんやりと穏やかなサウダージ感に身を浸したくなる素敵なアルバムです。
 
 メロウ・ブラジリアンな『レモン哀歌』でスタート。この曲の穏やかなグルーヴ感、キュートなヴォーカルでいきなりグッときました。
 重厚なコーラスを聴かせる小品『春宵の哀しみ』を挟み、煌めきシティ・ポップな『果てるともなく続く宙』。エレピの柔らかな音色と不安定なメロディを辿る歌声の妙が素晴らしい。
 切ないメロディに胸キュンなキュートなボッサ・ポップの『恋人たちの雨』は、これまたエレピの音色がとても好い。続く『裸足のシルエット』は、同様なポップ感のアップテンポな曲。このへんは、いわゆる渋谷系な音楽に濃いブラジル色を加味したような音です。
 お気に入りは、穏やかなアレンジが素敵な『恋、咲き初めり』。このアルバムの中ではあまり特徴のない曲なんですけど、フニョフニョした音もメロディも榊原香保里の歌声にピッタリだと思います。
 ラストの『陽だまりの午後に』は、スキャットが浮遊するブラジリアン・ポップ。ぼんやりグルーヴィなオルガン・ボッサ風のサウンドは、この曲以外でもそうですが、'70年代のデオダートとかを彷彿とさせます。