本日の1枚 Astrud Gilberto

 Astrud Gilberto / September 17, 1969 (CD)

September 17, 1969

September 17, 1969

 
 1969年に録音された、Verve在籍時代最後のアルバム。シカゴにビー・ジーズビートルズ、ドアーズなどの楽曲を取り上げたカヴァー集です。
 アストラッドの歌声はいつもどおり魅惑的なヘタウマ・ウィスパー・ヴォイスなんですけど、楽曲のアレンジがとても面白いアルバムです。
 どことなく場末な雰囲気も漂う、どうにもいかがわしいラウンジ調な色彩のサイケ・ポップなアレンジが施されているのです。
 アストラッドの歌声の魅力と相俟って、絶妙な脱力感のソフト・サイケなアルバムに完成されています。
 
 冒頭のシカゴのカヴァー『Beginnings』は、ソフト・ロッキンなアレンジながら重く響くベースがサイケな味付けを付していて、緩やかなグルーヴィさが素敵な逸品。
 ビー・ジーズの『Holiday』は、高速ファンキーに始まって低速イージーなサイケ・ポップに転調するなど、カッコいいのか間抜けなのか判別しにくい、これまた名カヴァー。
 ビートルズの『Here, There And Everywhere』は、ストリングスのアレンジなどは普通にソフト・ロックしてると思いきや、そっと鳴り響くオルガンの音色などはやはりサイケな味わいを。
 ゆるゆるなドアーズ『Light My Fire』、呑気にファンキーなバーデン・パウエル『Let Go』、ゴージャスにソフト・ロッキンなマーゴ・ガーヤン『Think Of Rain』など、いい調子で続きます。
 お気に入りはニルソンのカヴァー『Don't Leave Me Baby』。フォーキー・ソウル風に始まり、軽やかで色彩豊かなソフト・ロックに展開していくんですけど、抑揚なく歌詞をつむぎ出すヴォーカルがとにかく素敵なんです。
 
 
 Beginnings