本日の1枚 Tommy Roe

 Tommy Roe / Paisley Dreams (CD)

Paisley Dreams

Paisley Dreams

 
 トミー・ロウのソフト・サイケ2部作、1967年リリースの「It's Now Winter's Day」と1968年リリースの「Phantasy」をカップリングしたお得な再発CDです。
 
 「It's Now Winter's Day」はカート・ベッチャーがヴォーカルのアレンジを担当したことでソフト・ロック・ファンに人気の名盤なんですけど、過度なアレンジにトミー・ロウが怒ったという逸話も知られています。
 聴いてみるとなるほどカート・ベッチャーな音ですね。コーラスにまでヘンテコなエフェクトを施し、微妙に歪んだハーモニーが醸し出すサイケ感がとても素敵なんですけど。
 
 特に『Moon Talk』なんて、心地良い重厚なコーラスの背後にヘニャヘニャしたエフェクト処理や珍妙なSEなど、ポップなサイケ加減はまるでミレニアムであります。ちなみに、もちろんこの曲がアルバムでは一番のお気に入りであります。
 躍動感あふれるビートにグネグネなコーラスが面白い『Aggravation』、トライバルなリズムもファニーな『Misty Eyes』、ちょいとスウィート・ソウル風な『Have Pity On Me』、小粒ながらソフト・ロックの魅力を湛えた『Sing Along With Me』、音粒がキラキラ輝くサイケ・ポップ『Long Live Love』、ハーモニーの美しさが光る『Night Time』、バラードな曲調にマッドなアレンジが垣間見える『It's Now Winter's Day』など、文句なしのソフト・サイケ名盤であります。
 
 「Phantasy」はカート・ベッチャーの代わりにボール・ルームのジム・ベルを迎えています。
 「It's Now Winter's Day」に続けて聴くと、やっぱちょっと地味な印象を受けますが、その分だけ甘いメロディのメロウ感が強まって、真っ当なソフト・ロック盤としてやはり好いアルバムであります。
 
 例えば、『Plastic World』では雷鳴のSEや転調の多用なんかにも関わらず、『Moon Talk』とかと比べちゃうと普通に聴こえちゃいますね。甘いメロディが魅力的な名曲ではあるんですけどね。
 タイトルどおりにメランコリックな空気が好い『Melancholy Mood』、弾むリズムに甘い歌声も弾なアッパーなサイケ・ポップ『Little Miss Sunshine』、キャッチーなハーモニーを思わず口ずさんでしまう『Goodbye Yesterday』、シタールの音色も甘い『It's Gonna Hurt Me』など、これはこれで名盤だなぁ。