本日の1枚 Juana Molina

 Juana Molina / Un Dia (CD)

Un Dia

Un Dia

 
 アルゼンチン音響派の歌姫、2008年にリリースされた5枚目のアルバム。
 ちょっと気味の悪い人形のジャケが怖いですね。なんかちょっとビョークっぽいジャケですけど、内容のほうもちょっとビョークな方向に向いてたりします。
 前作までは、ぼんやり穏やかなフォークトロニカ系サウンドの中に、時おり閃光のように走る緊張感や垣間見える狂気なんかが素敵でした。
 けれど本作では、中南米風に土着的な躍動感に支えながらも、非常に不安定で内面に向かうカオスな雰囲気に満ちています。過去作でも中南米独特なアシッド感が漂っていましたが、それがモロに押し出されてるよう。グネグネと視覚的にもトリッピーな音世界です。
 
 冒頭タイトル曲の『Un Dia』は、アフロ・トライバルに呪術的な歌声とリズムがゾクゾクくるほどカッコ良い。そしてなんか怖い。グルグルと頭の中に幻想が渦巻いてくるような吸引力の強い躍動感に捕らえられてしまいます。
 続く『Vive Solo』でも、彼女のつぶやくような歌声が呪術的。「うた」というよりもヴォイス・パフォーマンスなヴォーカル・ワークです。
 
 「深い森の奥」な穏やかさと恐怖感が現れては立ち消える『Lo Dejamos』、大地に密着した重いダンス・ミュージック『Los Hongos De Marosa』、ドリーミーな美しさがどんより輝く『No Llama』、幾層にも重なるスキャット・ワークが押し寄せる『Dar (Que Dificil)』。どれも力強くて、その力強さに聴いてるこちらのパワーが吸収されてしまうような底なし沼のような楽曲が続きます。
 特にお気に入りは、フォーキーにエレクトロニカ・ポップな手法ながらも、土着的な躍動感とエロティックさが素敵な『Quien? (Suite)』と『El Vistado』でした。
 
 
 Un Dia