本日の1枚 原田知世

 原田知世 / music & me (CD)

music & me

music & me

 
 デビュー25周年と彼女の40歳を記念し、2007年にリリースされたアルバム。
 プロデューサーにMOOSE HILLの伊藤ゴローを迎え、鈴木慶一高橋幸宏大貫妙子高木正勝キセルなどが参加。
 
 曲がどれもいいんですけど、彼女の歌声もまた素晴らしい。
 アイドル時代のあどけなさを残したり、ふくよかにグルーヴィさを感じさせたり。
 決して「上手い」部類の声じゃないと思うんですけど、自分の声質を完全に理解しているからできるのであろう、表現力の豊かさが素晴らしいですね。
 
 オープニングの『Cruel Park』は、アコースティックな楽曲ですが其処彼処から漂うエレクトロニカな感性が素敵。落ち着いた歌声も好し。
 都会の街角な印象、といってもシティ・ポップではなくてフレンチ・ポップ的手法のSSWな『色彩都市』。大貫妙子のカヴァーです。
 ピアノとウッドベースを中心にしたシンプルな演奏に、穏やかでグルーヴィな歌声がじんわり響く『きみとぼく』。
 バカラックのカヴァー『Are You There?』は、幸宏らしい硬質なリズムと微細な電子音の煌きに支えられて、メロウ・ファンキーな「うた」に。
 
 鈴木慶一による『菩提樹の家』は、アコースティックな楽器の音色と歌声のメロウな浮遊感が素敵な逸品。なんというか、何度でも繰り返したくなる普通にいい曲です。
 普通に素敵といえば、ボッサにセルフ・カヴァーした『シンシア』。間抜けな表現で申し訳ないけど、「肩の力の抜けた」感がいいですね。彼女の音楽への対峙の仕方そのものがそうなったのでしょうね。
 
 淡い色彩のフォークトロニカな『Aie』(by 高木正勝)、メロウな生音感が素敵な『くちなしの丘』(by キセル)などとこれまた「普通に」良曲が続いた後、ラストは『時をかける少女』のセルフ・カヴァー。
 これもシンプルにボッサなアレンジ。ほぼアコギと歌声のみで勝負したこのカヴァーに彼女の「余裕」を感じるとともに、音楽への穏やかな目線を感じます。
 
 
 くちなしの丘