本日の1枚 戸川純
- アーティスト: 戸川純
- 出版社/メーカー: Sony Music Direct
- 発売日: 2006/02/22
- メディア: CD
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「恥レコ」という言葉があります。文字どおり所有していることが恥ずかしいレコードのことですが、「あなたの恥レコは」と問われると、アイドル歌謡やアニメの主題歌を挙げる人が多いように思えます。歌謡曲を「恥」とする感性が僕にはわかりませんけどね。
さて、僕の「恥レコ」はこの戸川純の名作「玉姫様」であります。1984年にリリースされた、ファースト・ソロ・アルバム。
あまりに恥ずかしくて手放してしまったけど、紙ジャケCD再発盤を買ってしまいました。恥ずかしいけど、やっぱり好きなんですね。
ランドセルを背負ったりヘンテコなコスプレで、ヘンテコな歌詞を淡々と歌ったり絶叫したり。その見世物的なキッチュさが作り上げる世界観に恥ずかしいけど惹かれます。
当時は他にPhewとかが好きでしたが、Phewの「ホンモノ」感に比べると圧倒的に「ニセモノ」なイメージですねぇ。でもニセモノならではの魅力があるんですよ。
思えば、80年代ほど珍妙なモノがもてはやされた時代はないでしょう。彼女のパフォーマンスはわざとらしかったけど、あざとさはあまり感じられませんでした。それは、時代の要請に純粋に応えた結果ではなかろうか。
戸川純は、僕にとっては、80年代の象徴ともいえる存在なのです。
まずはゲルニカからの息吹も感じられるレトロな趣の『怒涛の恋愛』でスタート。
民謡風の曲調に「我一介の肉塊なり」などという歌詞の『諦念プシガンガ』。こんないかにも文学少女な雰囲気もまた恥ずかしいなぁ。
ジャパニーズ・ニュー・ウェーヴまっしぐらな『昆虫軍』、和テイストなサイケ・ポップ感の『憂悶の戯画』、シンプルな美しさが逆に底知れぬ恐怖感を煽る『森の人々』とか、一度聴いたら忘れられない曲が並びますが、インパクトの強さではやはり生物としての女性の負の面をえげつなく描いたタイトル曲『玉姫様』でしょうね。
ちなみに、力をこめた歌声がまた恥ずかしいけど、オリエンタル・テクノ・ポップとしての楽曲の質の高さが素敵な『隣の印度人』が一番好きでした。
玉姫様