本日の1枚 Clare And The Reasons

 Clare And The Reasons / Arrow (CD)

Arrow (Dig)

Arrow (Dig)

 
 ジェフ・マルダーの娘とその夫による、オルタナティブ・チェンバー・ポップなユニット。と聞いてなぜだか敬遠していたのですが、このセカンド・アルバムを聴いて今まで手を出さなかったことを後悔しました。
 日本盤CDの帯には、ヴァン・ダイク・パークスの言葉が寄せられています。
 「メロディアスでミステリアス、それがバンドのエスプリ。夢世界の逃避行に、エレガントなアレンジに包まれた、エッジィな弦楽。」
 どこまで本気の文書なのかは分からないけど、確かにヴァン・ダイクが好きそうな要素が詰まっているアルバムではあります。
 
 微妙なドリーミーさとロマンティックさ、カラフルだけどボンヤリとどこか虚ろな色彩、メロディアスな楽曲から滲み出る洒落た実験性。
 室内楽器だけではなく電子音も配しているから、という理由だけでなく、エレクトロニカ的な感性も非常に強く感じます。
 カラフルでラヴリー、ほんわかと穏やかなサウンドなれど、どこか薄ら寒さを感じ、また焦燥感を掻き立てられるような感もあります。
 
 そして、クレアの歌声の可憐さがまた素敵ですね。
 キュートでスウィートなロリ声でありながら凛とした佇まいもあり、またフワフワとたゆたうような浮遊感も素晴らしい。
 
 儚げな歌声の浮遊感が素敵な『Ooh You Hurt Me So』、箱庭的音楽感がキュートなチェンバー・ポップ『Our Team Is Grand』、
 プニョプニョした電子音が響き続ける『You Got Me』、ジェネシスをモロに室内楽にカヴァーした『That's All』、
 アブストラクト風味の『You Getting Me』、微妙なエキゾ感の『Kyoto Nights』、
 アシッドなリズムがクセになる『Murder, They Want Murder』、なんとなく往年のシカゴ音響派を想起させる『Wake Up』、
 どれも職人的に丁寧な作り込みがうかがえる良曲が並びますが、
 一番のお気に入りは、可愛らしいフレンチ・エレ・ポップと溌剌とした室内楽が交錯する『Perdue A Paris』でした。
 
 
 Wake Up (You Sleepy Head)
 
 
 That's All