本日の1冊 幻想建築術

幻想建築術

幻想建築術

 年末に図書館に行ったとき、なんとなくタイトルに惹かれて借りたモノ。購入したまま積ん読状態の本が大量にあるのに、なぜにさらに借りて自分を追い込んでしまうのだろう。
 もっと聴かなきゃ、読まなきゃ、観なきゃ、という焦燥感から解放される日はいつか訪れるのであろうか。
 さて、実は篠田真由美の著書を読んだのは初めてなんですけど、独特な文体にちょいと魅了されてしまいました。パッと見て難解そう、というか文学少女向けに見えた文章が、読んでみると非常にポップに思えてきますね。
 自分が住む世界は誰かが見ている夢にすぎないのではないか、という誰もが中学生ぐらいに頭を悩ました哲学的主題を軸にした物語。ありふれた主題ではありますが、その構成が実に素晴らしい。
 物語が紡がれる「都市」が病人の夢想にすぎないことが冒頭で種明かしされるのに、「都市」の荒廃が滅びに向かう様の生々しさにドキドキ。
 幻想たる現象世界は、夢見る超越者の醜さを払拭することはできない。当たり前の結末が見えているのに、ついついページをめくってしまいました。
 古代から中世までのイタリアの歴史をごちゃ混ぜにしたような宗教観、世界観が、視覚的に浮かび上がる文体がやはり好いなぁ。