本日の1冊 ダブル・ジョーカー

ダブル・ジョーカー

ダブル・ジョーカー

 映画でも音楽でも、基本的に僕はハラハラドキドキするようなモノはちょっと苦手です。淡々としたモノが好き。(ホラーは別ですけど。)
 なので、スパイ小説なんて最も縁遠いところのモノではありますが、この著者の作品はどうも違う。スピーディでスリリングな展開と上質なミステリーとしてのどんでん返しの連続にすっかり魅了されております。
 なぜ淡々派の僕が魅了されるのか。おそらくは文章から意図的に「熱」が奪われているからでしょう。どこを切り取っても冷やかな視線に貫かれ、例えば登場人物の醜悪な内面が露呈するような場面であっても非常にサラリと描かれております。
 
 上から目線で安心感をもって読める表題作はまた違った味わいがありますが、「蠅の王」での欺瞞が剥がれ落とされていく快感、「柩」での底知れぬ駆け引きのスリリングさ、そして真の意味で裏切られた「ブラック・バート」。面白いですねー。おっと、ハラハラドキドキしちゃいました。
 ついに太平洋戦争前夜まで描かれてしまったけど、ぜひ続編を読みたい、と思っちゃいました。戦後まで続けて暗躍して欲しいですねー。