本日の1枚 湯川潮音

 湯川潮音 / Sweet Children O'Mine (CD)

Sweet Children O'Mine

Sweet Children O'Mine

 
 なんとまぁ残酷なカヴァー・アルバムでしょう。
 どれをどう聴いても湯川潮音の曲にしか聴こえません。彼女の発するオリジナリティが完全に原曲の雰囲気を蔑ろにしてしまっています。
 
 湯川潮音がカヴァー・アルバムをリリース、と聞いたときには、なんとなくマイナーな英国フォークだとかの渋い選曲を想像したのだけど、実際に並んでいる曲目を見てビックリ。
 オアシス、ミスター・ビッグ、ガンズ、プリテンダーズ、エアロスミス、、、。
 1980〜90年代のヒット曲ばかり。しかも、ロック系のバラードが中心。
 基本的に僕はそのてのモノが苦手なので正直がっかりしたのですが、さて聴いてみるととても素敵なアコースティック・アルバムだったのでした。
 
 前作『灰色とわたし』とプロデューサーは同じで、音の感触も同じ。
 柔らかなアコースティック・サウンドと、清々しい彼女の歌声。
 やはり英国フォークを感じずにはいられない世界観を発しており、そしてその世界観がカヴァーされる原曲の雰囲気を覆い尽くしております。
 圧倒的。曲云々じゃなく、彼女の表現者としての力量が溢れております。
 それ故に彼女のアルバムとしては名作ですが、「カヴァー・アルバム」としては駄作でありましょう。
 
 まず冒頭の『Don't Look Back In Anger』(Oasis)での気品と慈愛溢れる歌声で、あぁ、やっぱり彼女の歌声は素晴らしいと実感。
 ちょいとカントリー風味の『Sweet Child O’Mine』(Guns N' Roses)、シタールの音色もまた素敵な『Angel』(Aerosmith)、
 「奥深い森に差し込む光」な美しさの『Turn! Turn! Turn!』(The Byrds)などなど、
 
 全曲ともクオリティの高さに参りますが、特にお気に入りは、
 伸びやかな高音の歌声に痺れる『Don't Worry, Be Happy』(Bobby McFerrin)、哀愁たっぷりの『I Want You Back』(The Jackson 5)の2曲。
 もう涙無しには聴けません。
 
 
 Don't Worry, Be Happy