本日の1冊 SOSの猿

SOSの猿

SOSの猿

 一昨日、淡々と進む物語が好きだ、と書きました。そんな僕にうってつけの作品。
 ひきこもり青年とエクソシストの家電販売員、株の誤発注事件を調査する男、そして、斉天大聖・孫悟空
 そんな登場人物からはワクワクするようなストーリー展開を期待しそうですが、残念ながら最後までただ淡々と物語が進んでいきます。最後まで、ビックリするような展開は無し。
 孫悟空は大暴れなんてしません。ただ囁きかけるだけ、物語ることを。
 そして、伏線として散りばめられていた様々なSOSが物語を紡ぎ始め、ある(あった)かもしれない未来(現在)が絡まり合うことにより優しく訪れるカタルシス
 これもまたゼロ年代の終わりに相応しい「救済」ではなかろうか。
 まだ穏やかな余韻を楽しんでおりますが、この読後感こそ伊坂作品の醍醐味でありましょう。