本日の1枚 Judee Sill

 Judee Sill / Judee Sill (CD)

ジュディ・シル

ジュディ・シル

 
kobbadiva: 本日は西海岸の女性SSW、ジュディ・シルが1971年にリリースしたファースト・アルバムです。彼女はアサイラムの第1号アーティストだとか。このアルバムはkobbanovaさんも本当に好きなんですよね。
kobbanova: うむ。宗教音楽テイストなフォーキーさもいいんだけど、やっぱ音楽性よりもまずは歌声が素晴らしいんだな
kd: 優しい歌声ですね。
kn: 慈愛に満ちた歌声だ。どうしたらこんな風に歌えるのか、その答えを彼女の不遇な人生に見出すのは容易だが、あんまり言いたくないな。
kd: 家族との死別、ヘロイン中毒、犯罪による服役と、壮絶な青春時代を送っていますね。そして35歳でコカインのオーヴァードーズで死亡ですか。
kn: だからあんまり言いたくなんだよ、そんなことは。「音楽に救いを求めた」とか、だから「ピュアな想いに溢れている」とか、そんな前知識に左右された感想を安易に語りたくない。実際そうなんだろうけども。
kd: 先ほど宗教的と言われましたが、確かに讃美歌を連想するアレンジが多いですね。オーケストレーションの使い方がニック・ドレイクみたいだという意見もよく聞きますね。
kn: そうかなぁ。まぁでも歌声も含めた全体の雰囲気はニック・ドレイク的だと思うよ。ポップ度の高い曲であっても、切なさが胸に突き刺さる。あとはそう西海岸らしいサイケ感が滲み出てるのも印象的だな。
kd: オープニングの『Crayon Angels』は、牧歌的にフォーキーなイントロが耳に残りますね。
kn: なんとも優しげな歌声だなぁ。ベタな表現で恥ずかしいが、すべてを包み込むような慈愛に満ちている。
kd: 『The Phantom Cowboy』は、ちょっと軽やかな曲調ですが、あくまでも上品に貫き通していますね。
kn: オーケストラ・アレンジが叙情的な雰囲気を醸し出しているな。それが何かこう教会のイメージなんだよなぁ。
kd: 『The Archetypal Man』は、シンフォニックな要素が強まりますね。
kn: ダバダバなコーラスも荘厳な雰囲気に満ちている。これは凄いよ、怖いくらいだ。
kd: 『The Lamb Ran Away With The Crown』は、いきなり「パララ〜」な歌声が印象的ですね。
kn: アコギ中心のシンプルめの演奏だけど、ヴォーカル処理なんかは凝りまくっているよ。特にラストは怒濤の迫力だ。
kd: 『Lady-O』はタートルズのヒット曲ですが、彼女の作品なんですね。
kn: ストリングスなどのオーケストレーションは切なく優美な味わいなんだけど、これはもっとシンプルにアコギだけの演奏で歌声を聴かせてもらいたい気がするな。
kd: 『Jesus Was A Cross Maker』は、躍動感いっぱいのピアノに絡まるストリングスのアレンジが何気に素敵ですね。
kn: この曲は歌声がいいよなぁ。力強く歌ってるのにどこか憂いを帯びていて、それが微妙なサイケな感覚を呼び起こすのだ。
kd: 『Ridge Rider』は、これもシンプルな演奏で始まりますが、気が付けば複雑なアレンジが施された重厚なサウンドになっていきますね。
kn: 西海岸風なグネグネ感もある。気だるい浮遊感は心地良いが切ないな。彼女の曲はどれもアレンジがものすごく凝ってるんだよ。
kd: 『Lopin' Along Thru The Cosmos』は、壮大なオーケストレーションがじんわり心に染み入るような曲ですね。
kn: 悪いけどこういうのはちょっと苦手なんだよ。
kd: ・・・。
kn: 『Abracadabra』のシンフォニックな展開はもうプログレだな。この求道的に「のめり込んでる」空気感が痛々しいんだ。
kd: なるほど、そういう空気感はニック・ドレイク的かもしれませんね。
kn: ほほぅ、珍しくいいこと言ったな。
 
 
 Jesus Was A Cross Maker