本日の1冊 卵をめぐる祖父の戦争

卵をめぐる祖父の戦争 (ハヤカワ・ポケット・ミステリ 1838)

卵をめぐる祖父の戦争 (ハヤカワ・ポケット・ミステリ 1838)

 祖父の回想録として語られる戦争小説。いや、青春小説。
 舞台はナチス包囲下のレニングラード。17歳だった祖父はドイツ兵の死体からナイフを盗んだところをソ連軍に見つかり投獄される。脱走兵の青年とともに秘密警察の大佐に呼ばれた祖父は、大佐の娘の結婚式で焼くケーキのために「卵を1ダース」手に入れることを命じられる。そして2人は卵を探す旅に出るが・・・。
 彼らが卵探しの道中に巡り合うのは、食糧難で人肉を喰らう殺人鬼、ナチスの相手を強制されている娼婦、ナチスを襲うパルチザンなど。
 語られるのは戦争の愚かさや理不尽さではあるが、同時にそれはどうしようもなく滑稽である。
 そして卵探しの旅は、さらにどうしようもなく悲惨で滑稽な結末で幕を閉じる。
 ほんのり暖かなラストで救済の手を差し伸べる手法は、ハリウッド映画的な展開ではあるがまぁいい感じではあります。