本日の1枚 薬師丸ひろ子

 薬師丸ひろ子 / 古今集 (CD)

古今集+4

古今集+4

 
 このアルバムがリリースされた1984年当時、僕は高校生でパンク、ニュー・ウェーヴ系の音楽を好んでいました。けど、なぜか普通に歌謡ポップなこの盤を愛聴していたのでした。
 別にアイドル女優としての薬師丸ひろ子に興味があったんじゃないんだけど、彼女の透き通った不安定な歌声に惹かれていたのです。
 そして、彼女の楽曲を手掛ける作家陣はその魅力を十分に理解し、引き出す術を心得ているように思います。
 
 まずはなんと言っても竹内まりやの名曲『元気を出して』。薬師丸ひろ子のバージョンは、ストリングスなどを配しながらもシンプルな味わいのアレンジも秀逸であります。
 失恋した友人を慰める内容の歌詞もなかなか泣かせると思いきや、『トライアングル』の伏線となるあたりも素晴らしいセンスでして。親友から恋人を奪い、「今度だけは慰めの言葉も見つからない」と透明な声で歌うおぞましさにしびれます。
 
 また、意外とバラエティにと富んだアルバムであります。
 ややファニーなポップさの『白い散歩道』は、木漏れ日な味わいがあったり。ちょいとファンキーな『ジャンヌダルクになれそう』は、バス・ストップ系ディスコなアレンジだったり。
 侘びしい雰囲気のワルツ『つぶやきの音符』に、北欧エレクトロニカと同質の雰囲気を感じるのは僕だけかな。
 
 ヒット曲であった『探偵物語』や『セーラー服と機関銃』は、彼女の不安定な歌声の魅力を最大限に引き出していると思います。
 ちなみに当時は(今も)『すこしだけやさしく』が一番好きでした。穏やかにウキウキしてくるメロディは大滝詠一が、「淋しさって繃帯で縛ってあげる」などと素敵な歌詞は松本隆が手掛けたものであります。
 
 
 元気を出して
 
 
 セーラー服と機関銃