本日の1枚 Emily

 Emily / Emily (CD)

Emily

Emily

 
 とりあえずジャケがなんとも印象的ですなぁ、なんかちょっと怖い。ヒプノシスが手掛けたトゥリーズのジャケと同質の怖さと印象深さであります。
 1972年にNY出身の少女がフランスで録音したこのアルバム、レコ屋の謳い文句は「16歳の少女によるアシッド・フォーク」。そう聞くとなんとなくフレンチ・ロリータな歌声でヨーロピアン・テイストなフォーク・サイケを、なんて想像していたのいですが実際に聴くとまるで印象が違う。
 曲調はオールド・タイミーに米国フォーク・ロック的でありながら、ギターは英国トラッドぽかったり、オーケストラ・アレンジが施されたりとか、何かが少しずつズレているような感じを覚えます。
 そして、少女の歌声は全然キュートではないが、凛とした力強さと気品が溢れています。確かにアシッド・フォーク向きな歌声であります。
 
 例えば冒頭の『Confession』なんて、イントロのホーンの音色はソフロ風だったりするものの、アコギはトラッド風にジャカジャカしてるし、フルートの音色は古楽風だったりもする。このサイケ感はやっぱフランス的であるかな。
 多幸感溢れる『Sunflower Seeds』、リズムとアコギの刻みがミニマルな『My Mother’s House』、何気にベースラインがカッコいい『Song For Steven』とか、曲調は様々なれどなぜか幻想的な空気も好し。
 
 謳い文句どおりの少女アシッド・フォークという視点では『Born Again』が好いですが、最も印象深いのはラストの『Old Lace』。
 なんかもう思い切りプログレな展開なんです。全体にウネウネした演奏なんだけど、フルートの独奏で引っ張ったり、なぜか珍妙な掛け声が響き渡ってきたり。こりゃヘンテコで好いわぁ。
 
 
 Old Lace (To John)