本日読んだ2冊

 「蜩の声」

蜩の声

蜩の声

 連作8編を収めた短編集。どれも季節の移ろいに合わせ、日常の中に過去の記憶が浮かんでくる。
 主人公はたいてい家の中にいて、そこで思考が奔放に駆け回るうちに、季節感や周囲の環境と身体との境界がどんどん曖昧になっていく。
 さらに、気がつけば現在と過去の記憶も曖昧になっていく。
 その曖昧さを表出させるのは研ぎ澄まされた聴覚と嗅覚であり、特に匂いに対する感性の鋭さは凄まじく、そこから透明感のある官能が発せられる。
 匂いの密度が濃さは文体に依るものであろうが、正直まぁちょっと読んでて疲れちゃいますな。
 
 「文科系のためのヒップホップ入門」
文化系のためのヒップホップ入門 (いりぐちアルテス002)

文化系のためのヒップホップ入門 (いりぐちアルテス002)

 長谷川町蔵とポピュラー音楽研究者の大和田俊之がヒップホップの歴史と魅力について語る。
 とりあえず、黎明期からヒップホップに付き合ってきた日本のロックファンが、ネイティブ・タンの衰退以降は離れていったという指摘に唸りました。あぁ、僕だけじゃなかったんだ。
 ヒップホップを「音楽」ではなく「ゲーム」として捉え、「場」への志向という視点から分析する語り口に対して、大いに納得してしまいました。
 というか、ヒップホップを聴きたくなってきたよ。