本日の1枚 yanokami

 yanokami / 遠くは近い (CD)

遠くは近い

遠くは近い

 
 まさかyanokamiの新譜がリリースされるなんて思ってもみなかった。もしやファースト・アルバムでの没音源を集めただけだったりして、とか気になったりしてたけど、聴いてみたらそんな心配は希有に終わった。
 もちろんクオリティが高い、とも思ったけど、そんなことよりも矢野顕子がなんか好き放題やってる感がとても強い。ピアノも歌声もグングンと前に出てくるような目立ち方。
 そしてレイハラカミのトラックもいつもに増して緻密で、美しい音色が重層的に絡み合ってもあくまでも淡い印象。
 楽しそうな共同作業の雰囲気があったファーストに比べると、2人の持ち味が発揮されてる分だけ、ちょっと張りつめたような空気感も伝わってきます。
 
 残念ながら今作もオリジナル曲は少なく、カヴァーが中心。荒井由実オフコースなんかを取り上げています。
 それがまた原曲を解体し尽くしていて、どう聴いてもやはり矢野顕子とレイハラカミの2人の曲なのだ。
 
 冒頭の『Don’t Speculate』では、ハラカミな電子音は控えめですが、浮遊感はその分だけ水増しされていて、歌声は悪戯っ子のように縦横無尽に駆け巡る。ハラカミ抜きでユザーンのタブラが盛り込まれたバージョンも好いよ。
 延々とハミングが響く『See You Tomorrow』も好いし、複雑なリズムに合わせて美しさもブツ切りに輝く『yanokamintro』も好い。やっぱり、オリジナル曲をもうちょっと聴きたかったなぁ。
 
 荒井由実『曇り空』やオフコース『Yes Yes Yes』カヴァーでは、なんとデュエットも披露。2人の歌声がなんだかとても泣けるのだ。
 坂本龍一David Sylvian『Bamboo Music』は、キラキラした異質なモンド感が素敵だし、荒井由実『瞳を閉じて』は自由気侭なリズムのアレンジが凄い。これは歌いにくそうだなぁ。
 カヴァーでのお気に入りは、ストーンズの『Ruby Tuesday』。電子音のぐにゃり感にゾクッとくるし、ちょいとウィスパー気味な歌声もコケティッシュだ。